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駄作か傑作か?26歳が観たブレードランナー2049【ネタバレあり】


はじめに

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(引用元:ブレードランナー2049公式サイト)

こんにちは、daimaです。
今回取り上げる作品は、
ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、
ライアン・ゴズリング主演のSF作品、
ブレードランナー2049です。

カルト的人気を誇る1982年公開の映画、
ブレードランナーの続編ということもあり、
公開前から俄かに注目を集めた
本作でしたが、蓋を開けてみれば、
評論家からの評価は概ね高いものの、
米国や中国では興行成績が予想を下回り
費用の回収もおぼつかない情勢であるとの
情報も流れています。

(参考:「ブレードランナー 2049」、中国でも初動の興行成績振るわず……コスト回収がおぼつかない情勢)

eiga.com

各所のネットレビューを見て回っても、
「160分があっという間だった」
「愛を考えさせられるSF」
という風に
好意的に評価するレビューもあれば、
「退屈すぎて寝てしまった」
「個人的に今年度最悪の映画」

などという、辛辣な意見も見られる、
まさに賛否両論の様相を呈しています。

そこで本記事では、平成生まれの26歳ながら
初代ブレードランナーに感銘を受けた
大ファンの一人である私daimaが、
個人的視点として、ブレードランナー2049のレビューを、
良かった点イマイチだった点
両方を挙げながら解説していきたいと思います。。


※注意!本記事はブレードランナー2049のネタバレを含みます。閲覧の際はその点をご了承ください。


今も色褪せない、初代ブレードランナーインパク

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(引用元:YAHOO!映画)

さて、このブレードランナー2049。
そのタイトルから分かるように、
1982年公開の伝説的SF作品、
ブレードランナー
続編にあたる作品になります。

初代ブレードランナーは、
後のAKIRA」、「攻殻機動隊
マトリックス
に続く
サイバーパンクの源流として、
SF映画に燦然と輝く金字塔…
ということで、概ね
現在の評価が固まっていますが、
公開当時は興行成績が振るわず、
実際に観た人に話を聞いても、
はっきり賛否の分かれる
通好みな作品でもあります。

私が、自分の生まれる前の作品である
ブレードランナーを知ったきっかけは、
SF好きの伯父の勧めでした。

観始めのうちこそ、映像の古さもあって
前評判ほどではないか?
と半信半疑で鑑賞していましたが、
その特異なヴィジュアルや
深いメッセージ性にだんだん惹きこまれ、
反乱レプリカントのリーダー、ロイ・バッティ
有名な独白部分では、鳥肌が立つほどに
感動したことを記憶しています。

そして、初回鑑賞からしばらくして
二周目を改めて見直した後に、
私個人の感覚として、
これは間違いなく歴史に残る傑作だと
確信するに至ったのです。

あの感動は蘇ったのか?

そんなわけで、
一人の若輩ブレランファンとして、
台風迫る10月末の夜、私は期待を胸に、
市内の劇場へ自転車を走らせました。
その道中、小雨の降る煌びやかな市街を見て、
「これはブレードランナーの世界と
彷彿とさせるなぁ」などと
勝手に一人悦に浸っておりました(笑)

劇場に着いて席に座ると、
周囲の客層は原作からのファンと思しき
年配の方々が多数に、ちょっとオタクっぽい
若者のグループがちらほら。
時間帯の影響もありますが、
家族連れや若い女性はほぼ皆無。

そしていよいよ
待ちに待ったブレードランナーの続編が
幕を開けるのでした…


あらすじ

まず、本作のあらすじを
簡単にご紹介させて頂きたいと思います。


本作の舞台は、前作「ブレードランナー」の
2019年から30年後の2049年

地球環境の荒廃はさらに深刻になり、
かつて、労働用や慰安用の人造人間、
レプリカントを製造していたタイレル社は
2022年にレプリカントが起こした
大停電事件(ブラック・アウト)の影響で
既に倒産し消滅していました。
(この事件の顛末は
公式アニメ作品である
ブレードランナー2022で描写)

そのタイレル社に代わって
再びレプリカントの製造を行ったのが、
天才科学者ウォレス率いるウォレス社です。

ウォレス社はタイレル社の技術を
洗練させ、新たに生み出された
レプリカント
寿命に制限のないモデルとして
改めて人間社会に組み込まれていました。

本作の主人公を務める「K」は、
ウォレス社が開発し、
2049年のロサンゼルス市警に所属する
最新型のレプリカント、ネクサス9型です。

Kは日々与えられる任務をこなしながら、
自宅ではウォレス社が開発した
女性型ホログラフィーの恋人
「ジョイ」と甘いひと時を過ごし、
しかしひとたび外に出れば、
周囲の人間からは、「人もどき」として
度々差別的な扱いを受ける生活を送っています。

そんなある時、Kはかつての反乱レプリカント
サッパー・モートンの「解任」の仕事を与えられ、
サッパーの隠れ住んでいた農場まで出向いて
その忠実に任務を果たします。

しかし任務を終え帰路につこうとしたKは
偶然農場のはずれの木の根元に
埋められていた、人骨入りの木箱を発見し、
そのことから「K」は
レプリカントにおきたある「奇跡」を巡る
巨大な陰謀に巻き込まれていくのでした…

(Wikipediaの記述を元に改変)


ブレードランナー2049のここが良かった!

初代のDNAを継承し、さらに進化させた世界観創り

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初代ブレードランナー
ファンのハートを掴んだ最大の理由として、
その斬新な近未来描写が挙げられます。

大気汚染で薄汚れ、
酸性雨が降る大都市に、
様々な人種、言語が入り乱れ、
巨大な電光掲示板が輝き高層ビルが林立する…

そんな、ダークでオリエンタル、
かつディストピア的な近未来像が、
当時いかに衝撃的であったかは
決して想像に難くないものでした。

さらに驚きなのは、その
初代ブレードランナーの映像は、
CGの存在しない時代に、
リドリー・スコット監督が、
ミニチュア撮影などを駆使した
アナログの技術のみで
作り上げていた
という事実です。
(参考:ブレードランナー撮影秘話集)

そんな初代ブレードランナーの世界観を
本作は最新のVFX技術をひっさげて
どこまで進化させたのか。
そこがひとつの肝であるわけですが、
ブレードランナー2049は、
そんな期待に、想像以上の
圧倒的大迫力の映像美で応えてくれました。

アジア、中東、アフリカ、
ヨーロッパなど様々な人種が混在し、
巨大な美女のホログラムが闊歩する
ダークで猥雑な都市風景は健在ながら、
富山の黒部ダムも真っ青な超巨大ダムや、
見渡す限りのゴミに埋もれた処理場など、
前作にはなかった、だけどブレランらしい
風景描写も盛り込まれ、さらにそこに
脳を揺さぶるような音響効果もあわさり、
本作独自の強烈な映像体験を
これでもかと堪能させてもらいました。

建築や内装、衣装デザインも
非常にスタイリッシュで独創的。

個人的には、Kがレイチェルの遺骨の
DNA鑑定を依頼したフロントの
室内デザインがお気に入りです。
(Kを案内したのスキンヘッドの人物も、
モード風ファッションがキマっていて素敵でした)

他にも、Kとジョイが、
娼婦のレプリカントの肉体を借りて
一夜を共にした場面や、ホログラム投影された
エルヴィスのコンサート会場で
Kとデッカードが殴り合う場面など
ついつい「おっ」と唸ってしまう、
ハイセンスな演出が多々見られた印象です。


初代ブレードランナーのキャラやガジェットが再登場!

往年のファンにとって、
本作最大の山場は、ハリソン・フォード演じる
デッカードが再びスクリーンに
姿を表した場面ではないでしょうか。

年齢を感じさせない激しいアクションや、
お馴染みデッカードブラスターをぶっ放す姿は、
初代からのファンにはたまらないものでした。
(ついでに初代同様、終盤で敵に
やられっぱなしになる点も同じ)

また、その胡散臭い風態と
折鶴を現場に残す癖が印象的だったガフや、
CGで再現された、当時と全く同じ姿の
レイチェル(瞳の色は違いますが)が
再登場したのも嬉しいポイント。

ただ一つ悔やまれるのは、
日本のファンの間でやたら人気のある
二つで十分ですよ!の寿司屋の親父の
後継キャラクターは登場しなかった事です。
(漫画GANTZでもネギ星人の口癖として
オマージュされてましたね)

日本のファンのひとりとしては、
あの親父のセリフをオマージュとして、
ワンシーンでもこっそり出してくれたら
間違いなく、心中でガッツポーズを
とっていたと思います。(笑)


王道SFを貫きつつも、現代へ向けたテーマを包括した深みのあるストーリー

本作のストーリーはシンプルですが、
その見せ方や内包するテーマは重層的で難解です。

物語の大きな主軸となるのが、
サッパーがKに語ったレプリカント「奇跡」
これは、レプリカントであったレイチェルが、
人間であるデッカードとの間に
子供をもうけたこと
を指しています。

そして、このデッカードとレイチェルの子
(=レプリカントと人間のハーフ)こそが、
レプリカントの自己繁殖の可能性として、
本作最大のキーパーソンとなるわけです。

本作で悪役然として描かれる
ウォレス社の創業者ウォレスは、
この子供を利用して、レプリカント
繁殖技術を手にしたいと目論んでいますし、
対するレプリカントレジスタンスたちも、
自分たちの活動の旗印として
この子を手に入れたいと考えています。

これは、初代ブレードランナー
設定を引き継いで、さらに科学的、
倫理的問題として深化させた
秀逸な設定であり、
大変意欲的な試みだと感じました。

そして、その子供を追う役目を
図らずも引き受けることになったのが
レプリカントブレードランナーK
…というのが本作の大筋です。


AIは人間と同じような心を持ちうるのか?

本作は、徹底的に王道のSFを貫いた作品です。
技術の進歩と倫理、心身問題といったテーマが
重層的に含まれた味わい深い内容となっています。

中でも興味深いのが、
世界でもっとも美しい顔第9位に選ばれた、
アナ・デ・アルマス演じる
本作のヒロイン、ジョイの存在でした。

ジョイは、ウォレス社の開発した
ホログラフィーであり、
AIによって擬似人格を与えられた
デジタル上の存在です。

つまり、彼女の言動は
どんなに人間らしく見えても
所詮プログラムされたAIでしかないのです。
(事実、ウォレス社はジョイを
作品の途中まで、Kの情報を探るための
手駒として利用していました。)

ですが、そんなジョイは、
だんだんとまるで心からKを
愛しているような言動を見せ、
ウォレスの部下の冷酷なレプリカント
ラヴによってデータを破壊された際には、
Kに対して「愛しているわ」
最期の言葉まで告げています。

彼女のこの行動が、AIに宿った
自我が起こしたものなのか、あるいは、
プログラムで規定された範囲のもの
でしかないのかは定かではありません。

ですが、観る側に取っても、
ジョイが消滅した場面では、単なるデータの
消去以上の重みを感じさせられましたし、
本作におけるジョイの存在には、
AIと人間の心の境界がどこにあるのかという
鑑賞者ひとりひとりへの問いかけが
含まれているように感じられました。


ブレードランナー2049のここがイマイチ!?

間延びした演出が多い

監督の趣向か、
不自然に長い時間をかけたカットが多く、
見ていて、しばしばじれったくなりました。

個人的には、Kとジョイの恋愛描写を
もう少しコンパクトに押さえた上で、
Kとデッカードの新旧主人公コンビの交流や
ウォルスの陰謀、反乱レプリカントの実情などを
もっと丹念に描いて欲しかったというのが
正直な感想です。


複雑な内容に加えて説明不足感があり、上映中気が抜けなかった

本作は場面の転換が多く、また
逐一丁寧に説明を行うタイプの
作品でもないため、観ていて
キャラクターの行動動機や関係性が
理解できなくなることがありました。

誰が今どういう情報を握っていて、
それがどういう意味で重要なのか?
ということを常に頭の片隅に置いて観ないと
あっという間に迷子になってしまうでしょう。

とはいえ、変に大衆向けに
迎合した作風にせず、
こうして完全に既存ファン向けに、
尖った作風に振り切ったことは
作品の質を高める上で
正しい決断だったとも思います。

もし、当記事をここまでご覧で、
これからブレードランナー2049を
鑑賞されるという方は、
初代ブレードランナーを観た上で、
なおかつしっかり睡眠をとった
元気な頭でのご鑑賞をおすすめします。


全体的に暗く、ラストはややカタルシスに欠ける

本作は、初代のファンへのサービス精神と
観るものに訴えかけるテーマ性に
重きを置いた作風であり、
映画に娯楽性や爽快感を求める人にとっては
馴染み辛い作品に仕上がっています。

この点、そういう作品だと
事前に了解して観る場合はともかく、
なんとなく面白そう、または
テレビで紹介していたから
という理由で鑑賞された方は
大いに肩透かしを食らう危険性があります。

また、近年珍しく女性に対する
扱いがあまりよろしくない作品でもありますので、
女性ウケも決して良くはないでしょう。

以上のことから少なくとも、デートや
家族サービスの一環で本作を鑑賞することは
懸命な判断とは言い難いものがあります。
あくまでもSF好きが一人、もしくはSF好き同士で、
黙ってじっくり観てこそ楽しめるタイプの作品でしょう。

おわりに

総じて、娯楽性を切り捨ててでも、
テーマ性や、ブレードランナーらしさ
を大切にした作品内容であり、
ある人にとっては名作でも、
別のある人にとっては
満足度の低い作品と評価されても
仕方ない部分はあります。

本作に対する
私の最終的な評価としては、
ブレードランナーの続編、そして
テーマ性のある正統派SF映画として、
十分名作たり得る作品。しかし、
エンターテイメントとして考えると、
冗長さや説明不足感が目立ち、
(興収的に見ても)やや惜しさのある
作品だとも感じました。

このように、かなり
人を選ぶタイプの映画ですが、
SF好き、ブレラン好きはもちろん、
頭を使って考えるタイプの作品が好きな方や、
ダークな雰囲気の作品が好きな方ならば
観て決して損はない作品だと思います。

そして、可能な限り、
その映像美と腹に響くような音響を
体感するため、劇場での鑑賞をおすすめします。