【初心者向け】CLIP STUDIO+液タブでデジタル絵を描く方法を手順付きで解説!

イラスト制作

近年ではPCのみならずタブレットやスマートフォンでも
高機能なペイントアプリが多数リリースされ、
高価な道具をそろえなくても
誰もがデジタルイラストに挑戦しやすい環境が整ってきました。

しかしながらデジタル絵は慣れるまでが大変で、
たとえアナログで基礎がある人であっても
初めのうちはペンタブ特有の手振れや
違和感に悩まされること請け合いですし、
他にも各種ブラシの使い分け、レイヤー機能や
合成モード等のデジタルならではの機能への習熟など
新たに覚えなくてはいけないことが沢山あります。

本日はそんな難しくも慣れれば便利で
奥深いデジタルイラストに挑戦してみたい、
あるいは挑戦してみたけれど思い通りに描けなくて
心が折れそうな方向けに、デジタル絵の制作に役立つ
基本的なコツとテクニックを
一枚絵の完成までの流れを通じて解説してみようと思います。

制作環境はPC + CLIPSTUDIO + 液タブですが
内容は基礎的な部分がメインですので
他の環境であってもお役に立つ部分があるかと思います。

それではどうぞ。

  1. 前準備~ソフトと道具(ペンタブ)をそろえよう
    1. で、結局板タブと液タブはどっちを選べばいいの?
  2. 今回描くもの
  3. ステップ1 : アナログの下絵を用意しよう
    1. なぜデジタルイラストにアナログの下書きが必要なの?
    2. 下書きはどれくらい描きこむべき?
    3. クリスタでアナログの下絵を取り込む方法
  4. ステップ2 : 下絵をもとに線画を描き出そう
    1. 線画に適した線の色や太さは?
    2. 手ブレを抑えたきれいな線を引くには?
    3. ツールできれいな線を引く方法
    4. TIPS : クリスタのベクターレイヤーについて
    5. キャラクターの線画が完成!
  5. ステップ3 自動選択ツールでベタ塗りを超速完了させる
    1. TIPS : 範囲選択がうまくいかないときは…
    2. 下色の塗分けが完了!
  6. ステップ4 : デジタルイラストの第二の鬼門。陰影塗りを攻略しよう
    1. 超便利!クリッピングマスクの使い方
    2. 合成モードで後からの変更に強い制作環境を作ろう
    3. 影の境界線をぼかしてリアル感を出そう
    4. メリハリのある美しい影を描く方法
    5. キャラクターの塗りが完成!
  7. ステップ5 : 主役が引き立つ背景の描き方
    1. 対比でキャラクターの特性を強調する
    2. “あいまい画法”でモチーフをスピーディに描く
      1. TIPS:選択範囲はフォルダ内のレイヤー全てを纏めて選択することも可能
    3. 背景を書き込む
    4. 雲の描き方
      1. 徹底的に実物を観察する
      2. 滲み感のある水彩ブラシを使う
      3. 層を重ねるように描く
    5. TIPS : 背景の色選びにも役立つ色彩理論
    6. 絵全体の明暗を調整して主役を引き立てよう
    7. 完成!
  8. おわりに
  9. デジタルイラストの実力アップに役立つおすすめの本
    1. ネイサン・フォークスが教える ランドスケープ水彩スケッチ
    2. 東方色技帖
    3. プロの画家が伝授 こう描けば絵は上手くなる

前準備~ソフトと道具(ペンタブ)をそろえよう

絵を描き始める前に、
私の制作環境を記載しておきます。

ノートPCDell G3 15インチ
ペイントソフトCLIP STUDIO PAINT PRO
ペンタブレットCINTIQ 13 HD

今回使用するペイントソフトは
株式会社セルシスが提供している
CLIP STUDIO PAINT PRO(以下クリスタPRO)です。

有料ソフト(5,000円)ではありますが、
売り上げ&ユーザー数No1ソフト(※CLIP STUDIO 公式サイトより)ということで
公式非公式含めリファレンスがとにかく多く、
何かわからないことがあっても調べればすぐ答えが見つかるので
初心者の方には特におすすめです。

ちなみに上位プランにCLIP STUDIO PAINT EX(18,000円)がありますが
こちらは複数ページ管理やトーン変換など、どちらかと言うと
漫画やアニメの制作に向いた機能が追加されたものになりますので、
一枚絵を描くだけであればクリスタPROで十分です。

ちなみにもしどうしても無料のソフトが良いということであれば
サポートやリファレンスの充実度は少々劣りますが
MediBang PaintやKritaあたりが無料かつ
クリスタPROに見劣りしないくらい機能豊富なのでおすすめです。

で、結局板タブと液タブはどっちを選べばいいの?

デジタルイラストを始める際に
多くの人が悩むのが板タブと液タブの
どっちを選ぶか問題ではないでしょうか。

板タブは手を出しやすい価格帯である反面、
手元と画面が離れてしまうため描き味に違和感が出やすく、
逆に液タブは板タブと比べると幾分お高めであるものの
付属のディスプレイに直接描画できることから
よりアナログに近い感覚で絵が描けるというメリットがあります。

その上で、私がデジタルイラスト初心者の方におすすめするのは
基本的には液タブの方です。

なぜならペンを置いた位置と絵の位置が
一致しているというメリットは大きく、
作業効率や学習時の負担を減らすという面を考えれば
多少のコスト増を受け入れても
液タブを使用するメリットが勝ると思うからです。

とはいえ液タブでなければ上手な絵は描けないかと言えば
そんなことは全くなく、プロの中にも液タブではなく
板タブで素晴らしい作品を描いている方が沢山いらっしゃいます。

また、比較的安価であるいうのは
仮にやっぱりデジタルは自分に合わないとなっても
少ない痛手で済むという意味でもやはり強い魅力ですので
最終的にはデジタル絵に対する熱意や
お財布事情との相談になるかと思います。

その上で可能であれば検討する際に
タブレットを持っている知人に貸してもらうか
家電店のお試しコーナーを利用するなどして
事前に実際の描き心地を確かめておくと
より失敗の可能性を減らせるかと思います。

今回描くもの

今回描くのは
東方妖々夢より八雲藍(藍様)です。

なぜこの藍様を描こうと思ったのかというと
それは第一に私が狐っ娘が好きだからというのと、
藍色と黄色をベースにした配色が後ほど説明する
色彩理論の解説の題材にぴったりだったからです。

ちなみに私は妖々夢プレイ済みですが
ノーマルで幽々子様撃破が精一杯な程度の腕前なので
藍様と戦えたことは一度もなかったりします(涙)

ステップ1 : アナログの下絵を用意しよう

なぜデジタルイラストにアナログの下書きが必要なの?

今回私はデジタルイラストを作成するに先立って
スケッチブックと鉛筆で簡単な下絵を作成しました。

デジタルイラストを描くのに
アナログの下書きは必ずしも必要ではないのですが
私の場合単純にその方が効率が良いのと、
アナログの描き味をデジタルにも生かしたいという理由から
デジタル絵を描く場合にはいつも事前に
アナログの下絵を用意するようにしています。

また、特にデジタルに慣れないうちは
線一本すらなかなか思い通りに引けないものであり、
そんな中で構図のことを考えつつ線を引くのは
負担が大きくなりがちですので
それを少しでも軽減するためにも
アナログからデジタルへの移行を考えている方には
下絵の使用を強くおすすめします。

下書きはどれくらい描きこむべき?

下書きをどれだけ描きこむかは好みにも依りますが、
基本的には大まかな構図や
モチーフ同士の位置、大きさ等の関係性が分かれば十分ですので
下のように簡易的なものでも全く問題ありません。

スキャナが無くてスマホで撮ったものをPCに取り込んだため
全体的に色が薄く、下の方が明るくなりすぎてたりもしてますが
下書きは下書きですのでそこも気にしなくてOKです。

ただしこの時点で絵のゴール、つまり完成時のイメージは
しっかり頭の中に持っておくようにしたいですね。

なぜならゴールがあいまいなまま絵を描き始めてしまうと
多くの場合で途中から絵全体のバランスが崩れだし、
最悪の場合、プロジェクトが途中で破綻してしまうことにも繋がりかねないからです。

ですので下絵を描く際には最初に
構図のアイディアをいくつも描き出してから
それらを比較検討して最終的なイメージを
選定することをおすすめします。

クリスタでアナログの下絵を取り込む方法

構図を決め、下絵を描いたら
それをPCに取り込んでクリスタ上に表示してみましょう。

この際スキャナがあれば一番いいのですが
無い場合はスマホなどによる撮影でもOKです。

ちなみに私もスキャナが家に無かったため
まずスマホで下絵を撮影してから
Dropboxというクラウドストレージアプリを介して
PC側に受け渡すという手順をとりました。

下書きの画像データをPC内に保存出来たら、
それをクリスタにドラッグアンドドロップするか、
クリスタの上部メニューの「ファイル > 開く」をクリックすることで
選択したファイルを開くことが出来ます。

ステップ2 : 下絵をもとに線画を描き出そう

アナログの下書きが取り込めたら
それを基に線画を書き出していきましょう。

レイヤーパネルの上部にある
「新規ラスターレイヤー」をクリックして
新規レイヤーを作成し
レイヤーの名前を「線画」に変更しておきましょう。

これで線画用のレイヤーが準備できました。

レイヤーへの整理と名前つけは
作業が進んでレイヤー数が増えたときに
「あのレイヤーどこだっけ…?」と迷って
時間を無駄にすることを防ぐうえで重要ですので、
少し面倒ですが忘れずに行うようにしておきましょう。

線画に適した線の色や太さは?

線画に用いる線の太さですが、
これは目指す画風や好みによって適宜調整します。

ちなみに今回は絵に繊細な印象を与えたかったので
線の太さは気持ち細めの4px。
ブラシはムラのないカチッとした線が引けるGペンをチョイスしました。

線の色は後から調整できるので深く考えなくても大丈夫ですが
基本は黒や赤などの視認性の高い色が適しているかと思います。

手ブレを抑えたきれいな線を引くには?

デジタルイラストの最初の鬼門が線描です。

ペンタブに慣れないうちは中々綺麗な線が引けず
「自分にデジタル絵は無理だ…」
と弱音を吐きたくなってしまうかもしれませんが
線を引くことに関しては何よりも慣れが大事で、
諦めずに何度も練習をすれば
誰でもある程度綺麗な線が引けるようになるものです。

また、昨今のペイントソフトの殆どには
手振れ抑制機能が備わっており、
クリスタの場合はブラシごとに
手振れ補正の強度を調整する事ができるようになっています。

ただ、これはあくまでも補助的な機能でしかなく
基本的には何度も練習を重ねて
線を引く感覚を体で覚える必要があります。

その際におすすめの練習法は
自分の好きなタイプのイラストやモチーフを取り込んで、
その輪郭をなぞってみることですね。

デジタルで線を引く感覚を掴む練習になりますし、
お手本となる絵を真似て線を引くことで
理想的な絵を描くための練習にもなります。

ツールできれいな線を引く方法

人間の手に依らず、
機械的に綺麗な線を引く方法として
直線ツールやベジェ曲線が存在します。

直線ツールはその名の通り、
始点と終点を通るまっすぐな線を引く機能で、
ベジェ曲線は機械的に引いた直線を曲げて
滑らかな曲線を引くことができる機能です。

これらの方法で作成した線は
確かに全く手ブレの無い滑らかなものになりますが、
その反面無機的で冷たい印象にもなりがちですので、
描くモチーフや画風によって
手書きと使い分けていく必要があります。

TIPS : クリスタのベクターレイヤーについて

今回は使用しなかったのですが、
クリスタにはベクターレイヤーというものが存在します。

ベクターレイヤーのベクター(Vector)とは
方向の意味で、このレイヤー上の描画データは
通常のピクセル状のデータ(ラスターデータ)ではなく
全て座標とベクトルによって表現されるようになります。

ベクターデータはラスターデータと違い
どれだけ拡大してもジャギが出なかったり、
単純な図形を描画する場合は
ラスターデータより軽量だったり、
一度描いた線を後から簡単に
調整出来たりといった利点があるのですが
その反面掠れや滲みといった
写実的な表現には向かず、
今回の描きたいイラストの方向性とは
マッチしなかったため残念ながら
今回は出番がありませんでした。

キャラクターの線画が完成!

下絵を基にして線画を作成することができました。

大雑把な下絵を大きく補正しながら描いたので
下絵と比較すると細部は結構違っているかもしれないですね。

また、長い時間絵を描くことに集中していると
脳の習性として自分の絵のおかしいところに
自分で気づくことが難しくなってしまうのですが、
それを避けるためにも線画に限らず作業がひと段落したら
キャンバスを回転、または上下左右反転させてみたり、
一旦絵から離れて気分をリフレッシュするなどして
自分の描いたものにデッサンの崩れやおかしい箇所が無いかを
客観的に再検討する機会を持つことをお勧めします。

ステップ3 自動選択ツールでベタ塗りを超速完了させる

続いて先ほどのステップで作成した線画をもとに
各パーツの下色をベタ塗りしていきたいと思うのですが、
例えば髪の毛のように入り組んだ形状のパーツを
はみ出さずに塗るのは想像しただけでもかなり面倒くさそうですし
できれば時間を掛けずに作業を終わらせたいですよね。

そこでこのステップではペイントソフトの標準機能である
自動選択ツールを活用して超速でベタ塗りを完了させる方法をご紹介します。

まず線画レイヤーの下に新規レイヤー(今回は髪)を作成し
ツールパネルから自動選択ツールを選択します。

そして自動選択ツールで線画内の
髪の毛の部分をクリックすると
次のように線画の閉じた範囲内が自動選択され、
点線で囲われたような状態になります。

さらに一回のクリックでは
選択しきれなかった部分を
Shiftボタンを押しながら再クリックして
選択範囲に追加してあげましょう。

一通りの選択が完了したら
ツールパネル下部のカラーパレットから
髪に塗りたい色を選択し、
続いて上部メニューから「編集 > 塗りつぶし」をクリックしましょう。

すると…

選択した範囲のみが着色され、
複雑な髪の形状を大きな塗り漏れもなく
綺麗に塗分けることが出来ました。
これこそデジタルならではの強みですね。

この要領で「肌」「帽子」「スカート」等も
同じくレイヤー分けして
テンポ良く塗り進めていきましょう。

TIPS : 範囲選択がうまくいかないときは…

選択したくない範囲まで選択されてしまったり、
逆に選択したい場所がうまく選択されない場合は
自動選択ツールの「隙間閉じ」設定を変えてみましょう。

ここの数値を変更することで
自動選択ツールが閉じていると判定する
隙間の大きさの許容量を調整することが出来ます。

下色の塗分けが完了!

キャラクター全体に下色を付けることができました。

ここでパーツごとの塗りの範囲を明確にしたことは、
次の陰影つけのステップで大きな意味を持ってきます。

ステップ4 : デジタルイラストの第二の鬼門。陰影塗りを攻略しよう

ベタ塗りが完了したら
次は影やハイライトを詰めて
絵に質感を加えています。

超便利!クリッピングマスクの使い方

彩色に関して必ず押さえておきたい
ペイントソフトの機能の一つにクリッピングマスクがあります。

クリッピングマスクとは
直下のレイヤーの彩色されている範囲を参照して
特定のレイヤーの表示範囲を制限する機能であり、
クリスタではクリッピングマスクをかけたいレイヤー上で
「右クリック > レイヤー設定 > 下のレイヤーでクリッピング」
をクリックするか、レイヤーパネル上の
円筒形のアイコンを押すことで設定することができます。

クリッピングマスクがなぜ影塗りに役立つのか。
その理由は以下のキャプチャを見てもらえば
一瞬でご理解頂けるかと思います。

このように影を下色からはみ出さずに塗れるようになるので
作業効率が滅茶苦茶アップするんですよね。

また一つのレイヤーに対して
複数のクリッピングマスクを指定することも可能※なので
複数の影やハイライトを
一つの下絵にまとめてクリップすることも可能です。
(※クリッピングマスクが参照するのは直下の”クリッピングマスクでないレイヤー”のみ)

合成モードで後からの変更に強い制作環境を作ろう

クリッピングマスクと並んで
デジタル絵での影付けに役立つのが合成モードです。

合成モードとは複数のレイヤーが重なったときの
色の計算方法を指定できる機能なのですが、
これも言葉で聞くより実例を見た方が効果が分かりやすいかと思います。

上記キャプチャは髪レイヤーの上に重ねた
髪影レイヤーに合成モード「乗算」を設定した前後の比較です。

灰色一色だった髪影レイヤーが
その下にある髪レイヤーの影響を受けて
黄色っぽく変色していますね。

このように合成モードは
複数のレイヤーを掛け合わせた結果を表示できるため、
例えば上記の状態で髪レイヤーの色相を変えると
次のような結果を得ることができます。

髪影レイヤーは一切触らずに
陰影の調子を保ったままヘアカラーを変更することができました。

今回使用したのは
二つのレイヤーの色を掛け合わせた結果を返す乗算レイヤーでしたが
合成モードには他にも様々な種類があり、
使いこなすことで塗りの表現幅を一気に広げることができます。

また、最初に白黒で対象の明暗を書いた後に
色を塗っていくことで立体感やメリハリを出しやすくする
グリザイユという油絵由来の画法がありますが、
合成モード乗算を活用すれば明度と色相を
別々のレイヤーで管理できるため、
それとほとんど同じ手法をデジタルで実践することができたりもします。

影の境界線をぼかしてリアル感を出そう

アニメ絵のようにあえて
はっきりとした影を描く画風もありますが、
現実の影というのはグラデーションのように
端の方がぼやけて見えるものであり、
絵でも適度なぼかしをかけることで
リアル感を演出することができます。

影にぼかしを加えたい場合、
一番手っ取り早いのはエアブラシのような
ぼけ感のあるブラシを使うことですが、
ぼかしツールを使えば後からぼかしをつけたり、
ぼかしの強度を調整することも可能です。

このようにリアル感を出すのに便利なぼかしツールですが
あまりに強くぼかしをかけすぎると
それはそれでのっぺりとした
メリハリのない絵になってしまいますので
適度な強度に抑えるように気をつけましょう。

メリハリのある美しい影を描く方法

影付けというのは奥が深いものです。

例えば光が当たらない面が
暗く見えるのは子供でも知っている常識ですが
光源から最も遠い箇所が
実は縁取りのように明るく見えることがあるのをご存じでしょうか。

これは反射光によるもので、
自分の手を日光や照明に照らしてみることで
簡単に観察することが出来ます。

上記は素材サイトから適当にセレクトした写真ですが、
矢印で示した顔のヘリの部分をよく見ると
顎の縁のラインが線で引いたように
ぼんやりと明るくなっていることが見て取れるかと思います。

これは光源から直接放たれた光ではなく
他の肌や服などに一度反射した光を受けてできた光であり、
この光の表現を影塗りに取り入れることで
絵に手軽に臨場感とリアリティを加えることができます。

ラインに沿って明るさが入るので、
キャラクターのラインを強調する上でも役立ちます。

また、影を描く際にもう一つ
反射光と合わせて覚えておくと
表現力アップにつながるのが
「影の面と光の当たっている面の境目が最も影が濃く見える」という法則です。

上記の手の白黒写真の赤丸で囲んだ親指の部分を見てみると
光と影の境目の影の色が一段と濃く暗くなっているのが分かりますね。

他にも影の境目には明度が落ちるのと同時に
そのものが持つ固有色※が最も高くなる性質もあり、
肌であれば影の境目に血色の赤色などを差すなどすると
さらにリアル感を増すことができる場合があります。
(※固有色 = リンゴなら赤、バナナなら黄色などそのもの自体が持つ色のこと)

このように現実をよく観察して
その特徴を自分の絵に取り込んでいくようにすると
一気に塗りのクオリティがレベルアップしますよ。

キャラクターの塗りが完成!

ここまでのテクニックを活用して
全体に陰影を施すことができました。

しかし、これではまだまだ画面が寂しいので
続いての絵の背景を描き込んでいきましょう。

ステップ5 : 主役が引き立つ背景の描き方

背景を描き始める前に何を描くのか、
つまりキャラクターがどんな場所にいるのかを
決めておかなければなりません。

今回の場合、藍様は九尾の狐と式神という
オリエンタルな要素の強いキャラクターですので
普通に考えれば寺社や鳥居のような
背景をチョイスしたくなるところですが
しかしそれではあまりにも当たり前すぎて面白くありませんので
ここは「対比」という考え方に基づいて
もっと別方向のアイディアを探ってみたいと思います。

対比でキャラクターの特性を強調する

ここで言う対比とは真逆の要素のもの同士を並べることで
お互いの特性をより引き立たせる表現技法を意味します。

例えば「子供や小動物に優しいヤンキー」や
「強いおじいちゃん」といった相反する要素同士を利用したキャラ付けは
様々な創作物で見ることができる一種の定型ですが、
こうした定型が長く使われ続けているのも
ひとえにそれが見る人の心をつかむ上で
国や時代を問わず普遍的に通用する魅力がいかというのが主なあるからにほかなりません。

そのような理屈に基づいて
今回の主役である藍様と対比になるモチーフを
私なりにあれこれ考えてみたのですが、
その結果、最終的に選んだ背景は廃工場でした。

廃工場の持つ近代性、無機質さおよび退廃性が
藍様の持つオリエンタリズムや少女性に紐づく生命性と
良い対比になるのではないかという狙いです。

“あいまい画法”でモチーフをスピーディに描く

具体的に何を描くかは決めていませんでしたが
下絵の時点からキャラクターが何かに腰かけている
構図で描こうという構想はありましたので
ここではその腰かけている台座にあたるモチーフとして
風化した鉄骨的なものを描き込んでいきたいと思います。

ただ背景および前景については下書きを一切しておらず、
線画からまた書き込んでいくのも時間がかかってしまいますので
ここはより簡単に、下書きも線画もなしで
よりスピーディーに描く方向で行きたいと思います。

1. 不透明水彩ブラシで対象の固有色をざっくり塗って
全体のアタリをとります。

2.1で描いたアタリを
消しゴムツールで削りながら整え、
さらに金属的な部品や
腐食して溶け落ちた鉄のディティールを加えることで
見る人にこれが鉄骨であると分かるようにしました。

3.最後に影レイヤーを追加して
陰影を追加してあげれば前景用の鉄骨の描画は概ね完了です。

輪郭線を描かず、アタリを削るように引き算で描くこの手法は
スピード重視、かつ細部まで書き込む必要が無い場合に便利であり、
私はこれをあいまい画法と勝手に名付けて呼んでいます。

しかしながら改めて見るとこれだけでは
何となくまだ物足りない気がするので
ここはもうひとつアクセントを加えてみましょう。

鉄骨の上に絡みつくツタと葉っぱ、
そして小さな花のモチーフを追加しました。

先ほど描いた鉄骨部分とは
赤と緑で補色の関係、さらに生物と無機物で
対比の関係にもなっており、
なかなかよいアクセントになったのではないかと思います。

TIPS:選択範囲はフォルダ内のレイヤー全てを纏めて選択することも可能

今回、前景を描くにあたって
尻尾や手、鉄骨の上に乗っているお尻の部分など
前景の一部をキャラクターの形状に合わせて消す必要があったのですが、
クリスタではフォルダを選択した状態で
「レイヤーから選択範囲 > 選択範囲を作成」をクリックすることで
フォルダ内のレイヤー分を纏めて選択範囲に指定できるため
キャラクターフォルダを範囲選択することで
上記のように手早く作業を進めることができました。

背景を書き込む

足場部分に引き続き、
今度はより遠い位置にあるモチーフを描き加えることで
絵に奥行きを出してみたいと思います。

絵に奥行きを与える狙いで
キャラクターの背後に背の高い建造物を
小さく書き足してみました。

これだけでも少し奥行きが出たように思いますが
今描いた建物のレイヤーに
「ガウスぼかし」をかけると
さらに遠近感を強調することができます。

背景の建物がぼやけて
遠くにある感が強まりましたね。

ちなみに遠近感を出す方法としては
他にもパースを利用する方法や
距離に応じて対象の色味を変える空気遠近法などがあります。

雲の描き方

今回の絵は屋外にいる設定なので
画面上部に雲を書き足してみました。

雲は簡単そうに見えて意外とリアルに描くことが難しく、
私も決して得意とは言えないのですが、
少しでもリアルに見えるように
次のようなことを意識して描いています。

徹底的に実物を観察する

何を描くにしても観察は重要です。

インターネットがあれば季節も時刻も天候も
様々なタイプの雲の実例を見ることができますので、
まずは自分が描きたい雲と近い雲の写真を見つけて
その特徴を観察するようにしましょう。

滲み感のある水彩ブラシを使う

雲を描く際は滲み感の出しやすい
水彩ブラシで描くのがオススメです。

今回は主にクリスタ付属の
にじみ縁水彩ブラシを使いました。

層を重ねるように描く

雲をリアルに描くコツは層を重ねるように描くことです。

私の場合、まず全体を暗い色で塗ってから
明るい色を雲間から漏れ出る光のイメージの明るい色で
雲の縁を輪郭を描き出すように付け加えていく方法をとりました。

TIPS : 背景の色選びにも役立つ色彩理論

背景の色味を決める上で参考になるのが
色同士の相性を理論化した色彩理論です。

なかでも補色は絵を描くなら
必ず知っておきたい基本中の基本です。

既にご存知の方も多いと思いますが
補色とは例えば赤と青緑、黄色と紫のように
色相還図(カラーホイール)において
対極に位置する色同士の組み合わせのことであり、
これらの色は並べておくことで
お互いの色をより鮮やかな色に見せることができます。


青+黄色(ゴッホ『アイリス』)


赤+緑(マネ『笛を吹く少年』)


有名企業のロゴにも補色を利用したものが多くあります

名の知れた名画や有名企業のロゴの多くが
この補色の法則を利用していることからも
その有用性が伺えますね。

さて、話を今描いている絵に戻すと、
藍様の場合元々のデザインが
黄色(髪、尻尾)と青(服)の組み合わせなので
実はそのままでも補色の関係になっています。

ですのでそれはそのまま活かす方向で、
さらに今回は雲や遠景などの背景を
青のトーンで統一することで
髪、尻尾の黄色をさらに鮮やかに
際立たせることを目論みました。

色彩理論には補色の他にも
類似色やトーンオントーンなど絵のみならず
デザイン全般に役立つものが沢山ありますので
色選びに自信がないという方は
是非ともこの機会に深掘りしてみてください。

絵全体の明暗を調整して主役を引き立てよう

色の基本は色相(Hue)・彩度(Chroma)・明度(Value)の3つですが
中でも絵全体のバランスを決める上で最も重要なのが明度です。

人は明度の高いところに意識が向く性質があるため、
絵全体の明度をコントロールすることで
メリハリの効いたドラマチックな画面構成が可能となります。

今回はレイヤーパネルの一番上に
「明暗」レイヤーを追加し、
画面端や下部などの
主役から遠い位置の明度を下げることによって
相対的に主役である
キャラクターがより目立つように工夫しています。

このように、主役を目立たせたかったら
ただ主役を明るくしたり鮮やかにするだけでなく
逆に主役以外の明度や彩度を下げるアプローチもあるということですね。

完成!

描き込もうと思えば
まだまだ描き込めそうな気もしますが
そんなことしてたらこのブログの更新が永遠に止まってしまうので
今回はこれで完成とします。

おわりに

以上、デジタル絵の描き方の解説でした。

私自身試行錯誤の段階ですが、
この記事がデジタル絵を描きたいと思う
どなたかの役に立てば幸いです。

最後に私が今まで読んだ絵の技術本の中から
これは画力向上に役立ったっという
実感のある良書をいくつかご紹介して
本日はお別れとしたいと思います。

デジタルイラストの実力アップに役立つおすすめの本

ネイサン・フォークスが教える ランドスケープ水彩スケッチ

ドリームワークスやディズニーの映画制作に
コンセプトアーティストとして参加した経歴を持つアーティスト、
ネイサン・フォークスによる水彩スケッチの技術解説書。

この本の素晴らしい点は何より
著者による膨大な美しい作例を基に詳細な解説がなされている点であり、
構図の決め方、色の使い方、エッジとテクスチャ、奥行きの出し方など
水彩画に限らずどんな絵を描く場合でも使える
テクニックや考え方を幅広く学ぶことができます。

特に光と色の表現方法に関しては
読んでいて目からうろこの点が多数あり、
今でも絵を描く際にはいつでも手元に置いて
何度も読み返すようにしています。

東方色技帖

東方キャラクターのイラストを通じて
デジタルイラストの制作手法を学べる一冊。

こちらはよりデジタルイラストの描き方に特化した本であり、
CLIP STUDIOの細かい機能の解説も豊富です。

何より題材が東方ということで
可愛い女の子キャラクターを
デジタルで描きたいという人にとっては
特に得る者の多い内容であると思います。

プロの画家が伝授 こう描けば絵は上手くなる

プロの水彩画化である
醍醐芳晴氏による絵の技法解説書。

デッサンの基礎から構図の取り方、
果ては創造的であるための心構えに至るまで
絵が上達するために必要な事を網羅的に教えてくれます。

私の場合この本からは特に主役を目立たせることの重要性と
そのための明暗の強弱や力の抜きどころなどといった
画面全体のコントロールの重要性をより多く学びました。

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