アイディアの勝利!発想がイカれてる(褒め言葉)SCP報告書5選

SCP

あなたはこの発想についていけるか?

こんにちは、daimaです。
色々あって最近記事を投下できていなかったのですが、
本日は久々にSCP関連の記事をお送りします。

テーマはずばり「アイディアが面白いSCP報告書」

自分が読んだ中でも、特にアイディアが秀逸だと感じた5つのSCP報告書を解説付きでご紹介します。

また、選出に際してはなるべく新しめの報告書を選ぶようにしており、
最初にご紹介するSCP-1313 以外は全てシリーズⅥ(5000-5999)以降の番号からセレクトしています。

それでは、お楽しみください。

SCP-1313 「熊について解け」

SCP-1313 - SCP財団

オブジェクトクラス: Keter

個人的に今までSCP報告書の中でも
トップクラスにイカれてる(褒め言葉)と思ったのがこの報告書です。

SCP-1313は端的に言えばそれを解いた人の近くに
激怒したハイイログマが出現する数学方程式です。

それ以外に特にオチがあるわけでもない
アイディア一本勝負の極めてシンプルな報告書ですが、
下に掲載する財団の試験内容を含め、全体にセンスの高さが感じられ、個人的にお気に入り度の高い一作です。

現在、SCP-1313の部分的な構成要素の試験により、アノマリーについて以下の情報が明らかになっています:
- SCP-1313自体は、現在の数論で使用されている全ての公理に従う (が、時には非常に煩雑であることが判明している) こと。
- 単に方程式の逆問題を解くだけではクマを数値形式に戻すことはできないこと。数値演算を物理的実体に適用する方法はまだ創案されていない。
- SCP-1313は、準異常な結果を生成する他の方程式の要素として利用できること。例として、√SCP-1313は生きたハイイログマの平方根に解かれる — 同様に、SCP-13132は掛け合わされた2頭の生きたハイイログマの乗積に解かれる。生成された生物は通常、我々の現実への統合が不十分であり、短期間の存在の間は常に極度に敵対的であるため、このような '派生的な' 方程式を解くのは推奨されない。
- ハイイログマは素数を除いた全実数の集合範囲内に存在すること。しかしながら、ハイイログマの平方根は素数であり、a)基数ではなく、b)偶数でも奇数でもなく、c)動物の構成要素を含む、以上の3条件を満たす唯一の素数である。クマの根が整数である、故にクマ自体が普通の数列に存在することの本意は、現在ハッチンソン教授によって調査されている。

ハイイログマの平方根だとか、ハイイログマの乗積だとか
読んでいて頭の痛くなる表現が頻出していますが、
あまり深く考えると貴方のそばにも
クマが出現するかもしれないので、
それはそういうものなんだと華麗にスルーしておきましょう。

また、このアノマリーが地味に怖いのは、
報告書中の発生事例からもわかるように、
SCP-1313を解いているという自覚がなくとも
計算内容にSCP-1313のプロセスが含まれてさえいれば
クマの発生条件が満たされることであり、
数学に取り組む誰もが被害者になりうるという点です。

そのため財団の方ではSCP-1313の発生が予測される場所(学校など)の監視を行なっているそうですが、それでも被害を完全に抑えることは難しそうですし、かといってSCP-1313の存在を周知して事前に予防するということも諸々の理由からできないというのがなんともお辛いところですね。

ちなみにこのぶっ飛んだアイディアの出どころについて、
本家ディスカッションの著者コメントでは
root'beer'(ルート'ビア')のスペルミスである
root'bear'(ルート'ベア'=√ベアー)から着想を得たことが述べられています。

SCP-5153 「隕石が来たぞーッ!」

SCP-5153 - SCP財団

オブジェクトクラス: Safe  Keter Safe

本報告書は事前知識ゼロで読まれることを
他の報告書以上に強くお勧めしたい内容となっていますので、
以下の解説を読む前に、報告書の内容をご一読しておくことを推奨します。

はい、読まれましたね。

それでは最初にオチの部分から
ズバリ確認させていただくと、
この報告書は言うなれば隕石版の
「オオカミ少年」でした。

SCP-5153はそれが衝突した場合には
容易に人類が滅びることが予想される
直径13kmもの巨大隕石※で、
1908年に最初にこのアノマリーを観測した
財団の前身組織(ASCI)の残した報告書の内容からは
彼らが最後の切り札とも呼べるSCP-2000の起動準備をし、
その上で報告書の末尾には神への祈りの言葉を残すなど、
この事態に対して非常に焦燥し、絶望すらしていた様子が窺えます。
(※参考までに、恐竜を滅ぼしたとされるあの有名な
ユカタン半島に落ちた隕石の直径が10〜15kmほどであったと推測されています)

しかし、SCP-5153は最終的に、地表から7〜10kmの上空で何故か自然消滅。

消失に伴うエネルギーによって数名の死亡者が出たものの、
不可避と思われていた人類滅亡は理由もわからぬまま回避されることとなったのです。

そして面白いのがここからなのですが、
巨大隕石の飛来と消失という一連の現象が
その後も数年~数巡年のスパンで不定期的に何度も繰り返され、
その内に財団の中にある固定観念が植え付けられていきます。

それは、
「SCP-5153は地球に向かって飛んでくるが、墜落の直前に()()消失する巨大隕石である」という固定観念。

財団はこれまでの経験から帰納法的に
SCP-5153の性質を半ば決めつけ、あまつさえ
オブジェクトクラスの指定をKeterからSafeに変更するという
後から見れば愚かとすら言える判断さえしてしまったのです。

そして、この判断が何を招いたかについては、
報告書の最終バージョンの表記内容を見れば凡そ察しがつきます。

ERROR: 財団データベースに接続できませんでした

[DATA LOST]

財団データベースの消失。

それが意味するものは人類の滅亡か
それに類する状況であり、
この場合それを引き起こしたのは
SCP-5153の墜落であったと考えるのが自然です。

つまり、財団はこれまでの観測結果を過信したために
本来なら備えることができたはずの災いをノーガードで迎え、
その結果オオカミ少年を信じなかったことで
羊を全部食べられてしまった村人たちの様に
大きな代償を支払う羽目になったというわけですね。

誰もが知っている寓話を元に、
遥かにスケールの大きなSCP報告書に昇華させてみせたこの報告書。

ここから私たちが学べることは、
「昨日まで続いていた日常が明日も同じように続くとは限らない」
という忘れられがちな一つの真理…
なのかもしれないですね。

SCP-5190 「猛吹雪の中の足跡」

SCP-5190 - SCP財団

オブジェクトクラス: Keter

SCP-5190は、
全人類の中に一定の割合で存在しているという
ある特徴を持った人たちの総称です。

彼らがどんな存在で、なぜアノマリーに指定されているのか、
報告書中の説明を読みながら確認していきましょう。

・SCP-5190実例は、その生涯を通して外界に重大な影響を及ぼすことはほとんどありません。
・SCP-5190が思いがけずもたらした社会的および環境的変化は、直後に元に戻ります。
・全SCP-5190実例は自身が認識されるのを困難にする軽微な知覚フィルターの影響を受けており、このフィルターの強度は近くに他の人物がいるにつれて指数関数的に増加します。ただし、このフィルターの強度は、実例が犯罪やその他の社会的に不適切と見なされる行為に従事している場合にはほぼゼロにまで減少します。

Keterに指定されている割には大人しめというか、
あまり害のなさそうな印象ですね。

唯一アノマリーらしい点があるとすれば、
周囲から認識されにくくなる知覚フィルターが
SCP-5190にかかっているという点でしょうか。

もっともこのフィルター、
犯罪や社会的に不適切な行為にかかわっている時など
本来目立ちたくないシチュエーションに限って解除されてしまうということで、
一見するとSCP-5190当人にとっては殆どメリットがないように思えます。

報告書の残りの部分に何か秘密が隠されているのでしょうか?
引き続き、残りの部分を見ていきましょう。

・ほとんどのSCP-5190実例は、その信念がどのようなものであろうと、人間関係の大半が最良でも知人程度にしか達しません。SCP-5190実例と面識がある人物に質問したところ、そのほとんどがSCP-5190実例のことを、何となく好感は沸くものの突き詰めると存在感が無い人物であると形容しています。
・SCP-5190実例の知人に実施したインタビューのうち、80%が実例の名前や容貌といった詳細を完全に思い出すことに著しい困難を伴い、残りの20%がそのような詳細を全く覚えていませんでした。

・死亡したSCP-5190実例に関する記憶は、その実例に遭遇したことがある全ての人物から急速に薄れていきます。観測された全ての事例において、死亡から3日後に当該実例に関する記憶が完全に失われ、重要度の低い何かを忘れたという漠然とした考えのみが残ります。

これでSCP-5190に関する説明は全てです。

「無害に見えて実は…」的などんでん返しなどなく、
最後の最後まで徹底して無害な存在でした。

ですが、この報告書を読み終えたとき、
胸の奥に小さな鋭い痛みを感じたのは
きっと私だけではないのではないと思います。

  • 「人間関係の大半が最良でも知人程度にしか達しない」
  • 「何となく好感は沸くものの突き詰めると存在感が無い」

特にこの辺りの描写は、
「自分のことを言われている?」と
思わずドキッとしてしまった方も少なくないのではないかと思われます。

自分には親友と呼べる友人ができないかもしれない、
自分には社会にとって居てもいなくても変わらない存在なのかもしれない、
自分が死んだあと、自分を知る人が誰もいなくなった世界を想像するのが怖い…

私が本報告書を読んで特に感心したのは、
こういった文明社会に顕著な人間の根源的な恐怖を、
SCP報告書の形式を借りて見事に描き出してみせている点でした。

また、報告書本篇の内容からは外れるため
引用を後回しにしていましたが、
本報告書は補遺の内容まで実にキレッキレです。

補遺5190-1: 財団の関心が薄いため、このアノマリーについての情報はこれ以上公開されていません。

私自身も日ごろあまり目立ちたくないと思っているタチですが、
こういう風に「目立たない人間」の姿を客観視させられると
その信条にもいくばくかの揺らぎが生じてしまいそうです。

ちなみに報告書の内容からはやや話題が逸れますが、
この報告書に関して私が気付いた興味深い点に、
本家と日本支部でのup vote数の差があります。

基本的に本家の報告書は日本支部よりも
本家の方でのup vote数が多くなる傾向にあるのですが、
この報告書に限っては本家では+49、日本支部では+95という
評価の逆転現象が発生しているんですよね。

これはもしかすると
本報告書が描き出した現代的な孤立や虚無感が、
本家を利用する英語圏の人々にとってよりも
我々日本人にとっての方が
よりリアリティを持って感じられる状況にある
ということを示唆しているのかもしれませんね。
(もしそうだとしたら日本人としては少々哀しい事ですが…)

SCP-5218 「プリコンセプション II」

SCP-5218 - SCP財団

オブジェクトクラス: Explained

SCP-5218は2013年にノルウェーの貨物船の密閉された部屋から発見された目的不明の大型機械です。

SCP-5218は1つの面を除いては滑らかで、全ての面には怪奇部門所有というなんとも怪しい文言が型押しされています。

SCP-5218の最大の特徴は、1つの面に取り付けられた金属製の引き出しになんらかの物品を投入すると、その少し後に取り出し口から別の物品を排出するという点にあります。

この説明の時点で、ある程度SCPに造詣の深い方であればSCP-914のことを思い出したかもしれませんが、入れたものと出てくるものに一見法則性がないという点ではこちらも同様です。

以下に財団が行なった実験記録を引用するので見てみましょう。

入力 出力
リンゴ、レッドデリシャス品種。 各財団サイトで用いられるタイプの軍用戦闘糧食。チキンアルフレッド味。
1kgの花崗岩。 サイト-19 地下1階~地下5階の詳細な設計図が入った小さな丸筒。
2kgの錘。 乾燥した血液に覆われたプラスチック製トロフィー。血液のDNAは元サイト-19警備員、レオン・エイブラムス(故人)と一致する。エイブラムスの遺体は火葬されている。
プラスチック製の立方体。 電話帳に1件の番号が登録されたNokia 3310携帯電話。市外局番はテネシー州のそれに対応しているが、当該電話番号を追跡する試みは全て失敗している。番号に掛けようとすると通常の“未使用”エラーメッセージが流れる。
銃弾。 手榴弾。ピンは引き抜かれていたものの、安全レバーが解放されておらず、起爆できない状態にあった。警備チームは問題なく手榴弾を安全に破棄することができた。手榴弾には財団の記章が刻印されていたが、明白な理由から詳細な分析は実施できなかった。
ハツカネズミの死骸。 機動部隊に支給されるボウイナイフ。刃の平面には13本の引っ掻き傷が刻まれているが、それ以外は無傷である。
生きたハツカネズミ。 SCP-5218の内部から叫び声が聞こえ、続けてダニエル・ジャクソン博士の所有物とされるクリアランスレベル4のキーカードが排出された。調査の結果、サイト-19所属研究者であるジャクソン博士は、紛失を理由として新しいキーカードの発行申請書を数ヶ月前に提出していたことが判明した。

ご覧の通り、全く法則性は見出せませんが
強いて言えば出てくるものの中に
財団に関連したアイテムが多いことは気になりますね。

投入した人物と関わりのあるアイテムが出てきやすいのか?
それとももっと別の何か深い法則性があるのだろうか…?

調べれば調べるほど謎の深まるこのアノマリーですが、
最終試験が行われてから7日後にある事例が発生し、
事態は急展開を迎えることとなります。

最終試験の終了後、SCP-5218は長期的な保管・監視のために地下28階へと移されました。
最終試験の終了から時間単位で正確に7日後、SCP-5218は数分間にわたって振動しました。
警備員と研究者が調査のために入室した際、SCP-5218の外部には数ヶ所の継ぎ目が生じていました — SCP-5218は数個の油圧ピストンとヒンジ付きアームで自らを展開し、内部機構を露出させました。

なんとSCP-5218が勝手に動き出し、
自ら内部構造をオープンさせたのです。

果たしてそこで財団が目にしたものとは…?

SCP-5218の内部構造は、引出しに投入された全ての物品がシュートを滑り落ち、フッ化水素酸入りのプラスチック容器の内部で完全に溶かされていたことを明らかにしました。
物品がシュートを落下するのを検知したセンサーは、回路を作動させ、SCP-5218の内部収納容器から1点の物品を取出口に排出させていました。
内部収納容器には子供用玩具、単純な電子機器、紛失郵便物などの雑多な物品群が入っていました。
SCP-5218への投入物と排出物の間に相関性は無いようです。

また、内部の金属棚からは、以下の文言を浮き彫り加工したプラカードが発見されました。

FUCK YOU FOR TRYING
ラミ・サルマン 作
四文字であなたたちの一ヶ月を無為にすることができる。
· ARE WE COOL YET? ·

そう、全てはかの要注意団体『ARE WE COOL YET?』による悪戯で、
SCP-5218は何の異常性もないただの単純な機械装置だったのです。

つまり財団担当者はこんな単純な悪戯に
まんまと貴重な時間と資金を費やされたわけであり、
ネタバラシを受け、全てを理解した直後の彼らはきっと
般若の如く憤怒の表情をしていたことでしょう。

しかしながらこの鮮やかな騙しの手口の標的は
財団職員だけでなく、それを読む私たちも同様で、
最後の最後までこのアノマリーがSCP-914のような
異常な品物であると信じて疑わずに読み進めてしまったのは
きっと私だけではないはずです。

SCPオブジェクトなのだから、以上な現象が起こって当たり前という
思い込みを逆手に取った、実に鮮やかな報告書でしたね

SCP-5929 「人類は平和の(小)便より生ず」

SCP-5929 - SCP財団

オブジェクトクラス: Safe

太平洋沖の海底で、人類誕生のはるか昔である10億年以上前に作成されたと思しき謎の彫り物(SCP-5929)が発見されたという、なんともロマン溢れるシチュエーションから始まるこちらの報告書。

研究が進む中でSCP-5929が人類の起源を示している可能性が高いことが判明し、さらにSCP-5929発見地点上空へのUFOの飛来、SCP-5929に酷似した物品の投下など次々に興味を掻き立てる事態が進行する中、最後に明かされるある意外な真実とは…?

…ここでそのネタバレをして興を削ぐような真似は避けますが、最後に一つだけ、この事件の本質を見事に意表しているO5-5の秀逸なコメントを引用して本報告書の紹介を締めさせて頂きます。

O5-5
本当に気まずい思いをすると思うんだ、分かるだろ?

終わりに

色々あってだいぶ間が空いた中で、久々に最近の報告書を漁りながら書いたこの記事でしたが、やっぱりSCPはいつ読んでも面白いですね。

特に最近のシリーズは短くまとまってパンチのある報告書が増えてきている気がするので、長文を読むのが苦手という方にもおすすめしやすいように思います。

それでは、またの機会に。

SCPに興味があるなら以下の記事もおすすめ!

タイトルとURLをコピーしました