5分でわかる!D・カーネギー『人を動かす』の要約まとめ

D・カーネギーの肖像教養

はじめに

あなたは『人を動かす』をご存じだろうか?

『人を動かす』は、20世紀前半のニューヨークで
ビジネス教育コースを実施していたデール・カーネギーが、
対人スキルの具体的な手法を、自身の見聞や歴史上の事例を交えて解説する
一種のハウツー本だ。

その内容から自己啓発書の元祖とも言われ、
これまでの売り上げは世界中で3,000万部以上、
日本でも400万部を超えており、
2011年には、Time紙の"最も影響力のある100冊の本のリスト"で
19位にランクインもしている。

そのようなわけで、正直今更説明するまでもないくらい有名な
この『人を動かす』なのだが、"自己啓発書"というだけで
何となく胡散臭いイメージが湧いて身構えてしまう私は
これまでこの本を読む機会が無かった。

しかし、つい最近まで開催されていた
Amazonのkindle bookセールにて通常の半額ほどまで値下げされているのを発見。
名前は聞いたことがあるし、暇つぶしにでもと何となく手に取ってみたのだった。

そうして読み始めてみると、なるほど確かに興味深い。

書かれているのは、主に良好な人間関係を構築するための
原則に関する具体的な方法論についてなのだが、
そのどれもが「そんなことでいいの?」と思ってしまうくらい
シンプルなものばかりなのだ。

例えば"人を動かしたければまず褒めよ"、であるとか、
"友人が欲しければ、まず与えよ"、であるとか、
"人に好かれたければ相手の話を聞け"、であるとか…

言っていることは当然と言えば当然、
大人なら誰もが薄々理解していそうなことばかりだけど、
じゃあ自分が日常でそれをきちんと実践できているかと問われると
自信を持ってイエスとは言いきれない。

そんな絶妙なポイントを鋭くついてくる本で、
だからこそ時代や国を超えて通用する普遍性があるのだと感じた。
特に次のようなことで悩んでいる人にとっては
この本を読む価値が大きいのではないかと思う。

  • 友達の作り方がわからない。
  • 悪いことはしていないはずなのになぜか周囲と馴染めない。
  • 人と口論になったり、険悪な関係になってしまうことが多い。

私も本書を読んでから
いくつかの原則を自分の生活に取り入れてみたが、
その結果は予想以上のもので、
確実に日常のQOLが向上した実感がある。

さて、そこで本題なのだが、
本日は本書を読んで特に私が感銘を受けた章について、
読書記録もかねてその要約を書き記していきたいと思う。

要約なので、本書のすべてをご紹介できるわけではないが、
特に重要なポイントは余さず抑えたつもりだし、
未読の方にとっては購入の判断基準になるのではないかとも思う。

それではいってみよう。

人を動かす原則

批判も非難もしない

抜粋

「人を裁くな 人の裁きを受けるのが嫌なら (エイブラハム・リンカーンのことば)」
(18p)

若いときは人づきあいが下手で有名だったベンジャミン・フランクリンは、後年、非常に外交的な技術を身につけ、人を扱うのがうまくなり、ついに、駐仏アメリカ大使に任命された。彼の成功の秘訣は「人の悪口は決して言わず、長所をほめること」だと、自ら言っている。
人を批評したり、非難したり、小言を言ったりすることは、どんな馬鹿者でもできる。そして、馬鹿者に限って、それをしたがるものだ。
(23p)

解説

まずは"人を動かす原則"よりこちらの原則を。

本書の中でカーネギーは
この"人をけなさなず褒める事(相手側に非がある場合でも!)"
の重要性を口を酸っぱくして何度も繰り返し説いている。

人は何か思い通りにいかないことがあると
その原因を他人に転化して非難したくなるものだけど、
感情的な非難は自分にも相手にも良い影響を与えず、
結果的にマイナスしか生まない。

言葉でも文章でも、何か自分の意見を相手に伝えるときは
脊髄反射的に思ったことをそのままぶつけるのではなく、
一呼吸おいて「ほんとうにその伝え方でいいのか?」
と一旦自問することがポジティブな人間関係の形成に大いに役立つことだろう。

相手に重要感を持たせる

抜粋

人は、何を欲しがっているか?

二十世紀の偉大な心理学者ジグムント・フロイトによると、
人間のあらゆる行動は、二つの動機から発する─すなわち、
性の衝動と、偉くなりたいという願望とである。

アメリカの第一流の哲学者であり教育課でもあるジョン・デューイ教授も、
同様のことを、少し言葉を変えて言い表している。
つまり、人間の持つ最も根強い衝動は、"重要人物足らんとする欲求"だというのである。
(29p)

解説

「人を動かす」で幾度となく繰り返し強調されるのが、
上記のフロイトとデューイからの引用に代表される
"人間は重要人物として扱われることを何よりも強く望む"というテーゼだ。

これはより端的に言い換えれば承認欲求のことだが、
カーネギーは相手の持つこの承認欲求を満たすことが
"人を動かす"上でも"人から好かれる"上でも
何よりも重要なのだと説いている。

我々は、子供や友人や使用人の肉体には栄養を与えるが、
彼らの自己評価には、めったに栄養を与えない。
牛肉やジャガイモを与えて体力をつけてはやるが、優しいほめ言葉を与えることは忘れている。
優しいほめ言葉は、夜明けの星の奏でる音楽の様に、いつまでも記憶に残り、心の糧になるものなのだ。(アルフレッド・ラント(俳優)のことば)
(39p)

カーネギーは相手の承認欲求を満たす最も有効的な手段の一つとして
"褒めること"に言及している。

叱られるより褒められた方が気分がいいのは当たり前だが、
これは褒める/褒められる時に放出される
ドーパミンと言う報酬系に作用する脳内物質の存在で科学的にも実証されている。

一方で、褒めるのは褒めるのでも、心にもない上っ面だけの「お世辞」は
むしろ逆効果にしかならないと警鐘を鳴らしてもいる。

結局のところ、お世辞と言うものは、利益よりはむしろ害をもたらすものだ。
お世辞は、偽物である。偽金と同様、流通させようとすると、いずれは、厄介な目にあわされる。
(40p)

たしかに、一度でも「この人は誰にでもお世辞を言う人だ」という印象を持たれてしまえば
それ以降はどんな甘言も相手の心には届かなくなってしまうだろう。

だからこそ、「本気で相手に関心を持ち、お世辞ではなく心からの賛辞を贈る」ことが大切なのだ。

相手の立場に身を置く

抜粋

「人間の行動は、心の中の欲求から生まれる…
だから、人を動かす最善の法は、まず、相手の心の中に強い欲求を起こさせることである。
商売においても、家庭、学校においても、あるいは政治においても、人を動かそうとする者は、
このことをよく覚えておく必要がある。これをやれる人は、万人の支持を得ることに成功し、
やれない人は、一人の支持者を得ることにも失敗する。(心理学者 ハリー・アレン・オーバーストリートの著書『人間の行為を支配する力』より )」
(46p)

解説

思うに、我々の大半は根本的に自己中心で
いつも自分の事ばかり考えているので
人に何かをお願いする時ですら
つい相手の立場を考えずに自分の事情ばかり話してしまいがちだ。

自分はもう他の案件でいっぱいいっぱいだから、
この案件は代わりにお願いしたい、とか、
今日は仕事でクタクタだから皿洗いをやって欲しい、とか。

特に焦っていて余裕が無い時ほど
自分本位な者の言い方になってしまう傾向がある。

しかしカーネギーは人を動かすためには
相手の事情をまず第一に置いて話すべきだと説く。

例えば、何かを頼むなら
まず初めに相手の気持ちを想像して
ねぎらいの言葉をかけてから本題に移るとか、
あるいは交渉事ならそれによって生じる
相手側へのメリットから先に話すとか。

こういう小さな手間を惜しまないだけで
相手が受け取る印象には天地の差が生じるものだ。

人に好かれる原則

友達が欲しいなら、まず自分から与えよ

抜粋

友をつくりたいなら、まず人のために尽くすことだ。
─人のために自分の時間と労力を捧げ、思慮のある没我的な努力を行うことだ。
(72p)

友をつくりたいと思えば、他人を熱意のある態度で迎えることだ。
電話がかかってきた場合にも、同じ心がけが必要で、
電話をもらったのが大変うれしいという気持ちを十分に込めて「もしもし」と答えるのである。
(73p)

解説

近年では「別に友だちなんていなくていいのでは?」
という論調も聞かれるようになったが、
それでもやはり人間は一人では生きていない生き物であって
多くの人は友人に恵まれたいと思っていることかと思う。

かくいう私も友人を作ることは昔から非常に苦手で、
学生時代など長らくなんで自分はこうなんだろうと悩んでいたものだったが、
今思えばそれも当然のことだった。

なぜならあの頃の私は人に何も与えずに、
自分が得ることばかり考えていたのだから。

いみじくも上記引用中で指摘されているように、
人は自分に何かをしてくれる(give)相手の事を好きになるものであって、
相手の立場を想像せず、友人関係とか金銭とかの利益を
一方的に得ようとする(take)だけの人間は必然的に孤立する。

それが嫌ならば、他者を全面的に受け入れ、
相手が望むものをまず先んじて与えるという心がけが不可欠だ。

人に好かれたければ、笑顔は絶やすな

抜粋

動作は言葉よりも雄弁である。微笑みはこう語る─
「私はあなたが好きです。あなたのおかげで私はとても楽しい。あなたにお目にかかってうれしい」
犬がかわいがられるゆえんである。我々を見ると、犬は喜んで夢中になる。自然、我々も犬がかわいくなる。
(79p)

解説

カーネギーは笑顔の齎すポジティブな効用についても言及している。

中でも興味深かったのは
「電話をする際にも笑顔は効果がある」という話だった。

カーネギーはある会社のコンピューター部長が
笑顔で電話対応したことで他の大手同業他社を押しのけて
有望な人材の獲得に成功した実例を挙げてこの説を強調している。

これを読んだ後、私も試しに
仕事上のwebチャットで同僚相手にこの"技法"を実践してみたところ、
確かに笑顔を作るだけで気持ちが若干ウキウキして、
画面の向こうの相手との話もいつもよりスムーズにいった。

これは恐らく一種の身体心理学と言う奴で、
体の動作が心に影響して自然と心までもがポジティブな方向に向かったのではないかと思う。

身体心理学…「動き」次第で変わる心 | ヨミドクター(読売新聞)
 心は脳が作り出す。その見方は間違いではない。けれども、心が操作しているつもりの身体が、その動きによって、逆に心を作り出している側面があることも見逃せない。(藤田勝)呼吸、表情、歩き方画像の拡大丹田呼吸法の訓練をする女性(東京都荒川区の「調

ともあれ笑顔を作るだけで毎日気持ちよく働けるなら
これ以上の幸いもないので今後もこの習慣は続けていこうと思う。

これを読まれているあなたも
電話に苦手意識があったり、どうしても気分が挙がらない日などには
騙されたと思ってこの"笑顔のメソッド"を試してみてはいかがだろうか。

人に好かれたければ、相手の名前だけは絶対に忘れるな

抜粋

人間は他人の名前などいっこうに気にとめないが、
自分の名前になると大いに関心を持つものだということを、
ジム・ファーレーは早くから知っていた。
自分の名前を覚えて、それを呼んでくれるということは、
まことに気分のいいもので、つまらぬお世辞よりもよほど効果がある。
(91p)

解説

人の名前や地名などを覚えることが苦手だという人は意外に多い。

しかしながらカーネギーに言わせればそれは
社交場かなり命とりな傾向であるようだ。

確かに、自分の名前を間違えて呼ばれた時には
いいようもない不快感と、
急いでそれを訂正したいという気持ちが湧き起こる。

それに…上司や重要な相手の名前を
言い間違えてしまった時のあのきまずさといったらない。
「私はあなたに興味がありません」と目の前で白状するようなものだからだ。

とにかく、人から好かれたければ
人の名前だけは忘れてはいけないというのは
カーネギーの言う通り一つの真理だろう。

自分が話すよりも聞き手に回れ

抜粋

「自分の言おうとすることばかり考えていて、耳の方がお留守になっている人が多い…
お偉方は、とかく、話し上手よりも聞き上手な人を好くものだ。
しかし、聞き上手という才能は、他の才能よりはるかに得難いもののようである」
(107p)

人に嫌われたり、陰で笑われたり、軽蔑されたかったりしたら、次の条項を守るに限る─

一、相手の話を、決して長くは聞かない
一、終始自分の事だけをしゃべる
一、相手が話している間に、何か意見があれば、すぐに相手の話をさえぎる。
一、相手はこちらよりも頭の回転が鈍い。そんな人間の下らないおしゃべりをいつまでも聞いている必要はない。話の途中で遠慮なく口をはさむ。
(107p)

解説

これもすごく基本的な事だけど
実践出来ている人が意外に少ないポイントではないだろうか。

適度なリアクションを返しながら人の話を聞くというのは
意外に体力と集中力を消耗するものだ。

だが、カーネギーは人の話をきちんと聞け人間こそが教養のある人間であり、
そういう人こそが真の”話し上手”ですらあると説く。

人を説得する方法

議論で相手を打ち負かすことは害の方が大きい

抜粋

議論は、ほとんど例外なく、双方に自説をますます正しいと確信させて終わるものだ。
議論に勝つことは不可能だ。
もし負ければ負けたのだし、たとえ勝手にしても、やはり負けているのだ。
なぜかといえば
─仮に相手を徹底的にやっつけたとして、その結果はどうなる?
─やっつけたほうは大いに気をよくするだろうが、やっつけられたほうは劣等感を持ち、自尊心を傷つけられ、憤慨するだろう。

─「議論に負けても、その人の意見は変わらない」
(135p)

解説

自分に自信がない人ほど、
つまらないことで自分を大きく見せようとする。

例えば、誰かが人前で間違った知識を披露したときに、
その間違いを得意顔で指摘し、恥をかかせるようなことをしたりする。

いわゆる揚げ足取りというやつだが
こうすることでその人は一時的な優越感と満足感を得る代わりに
高確率で間違いを指摘されたことで恥をかいた相手からの深い恨みを買うことになる。

また、場合によっては周囲からも
この人はそんなことでしか自尊心を満たせない
つまらない人間なのだと評価されてしまうこともあり得る。

そんなわけで、何せよ「議論で誰かをやっつける」ことは、
たとえそれに勝利したとしても結果的には
マイナスにしかならないからするべきではないとカーネギーは説いている。

これはどちらかというと、女性よりも男性、
それも理系タイプの人の方がより耳に痛い話ではないだろうか。

私も仕事柄周りでそういうことから
人間関係を不味くした人は大勢見てきたし、
私自身も同様の原因で失敗をした経験は少なくない。

円滑な人間関係を保ちたいならば、
ふとした瞬間につまらない自我が頭を出さないよう
常に自分自身を客観視する必要があるだろう。

自分の過ちを素直に認めることの重要さ

抜粋

どんな馬鹿でも過ちの言い逃れぐらいはできる。
事実、馬鹿はたいていこれをやる。
自己の過失を認めることは、その人間の値打ちを引き上げ、
自分でも何か高潔な感じがしてうれしくなるものだ。
(162p)

解説

仕事などでミスをして、しかもその落ち度が完全に自分にあるとわかった時に
全身の血の気が引いて、体温が一気に2~3度は下がったような感覚を覚えたことがあるのはきっと私だけではないはずだ。

瞬時に駆け巡る脳内物質、
多種多様な言い逃れのバリエーション…

しかしカーネギーはそういう時にこそ
下手な言い逃れはせずに潔く自分の過ちを認めるべきだと説く。

しかもその理由というのが、
何も道徳的に正しいからそうするべきだからというだけではなく、
そうした方が最終的には得だからという実利的な面からもそうするべきだというのだ。

確かに、ミスを報告される側からしてみれば、
素直に過ちを認めている相手をそれ以上攻撃するのは
逆に自分が悪人になった気がして気が咎めるが、
下手に言い逃れしようとする手合いに対しては
かえって徹底的に糾弾したくなるのが人情というもの。

自分はうっかりミスが多い。
そういう自覚のある人ほど、この言葉は胸に留めておく価値があるだろう。

"同情"は相手の怒りから身を守る盾になり得る

抜粋

口論や悪感情を消滅させ、相手に善意を持たせて、
あなたの言うことを、大人しく聞かせる魔法の文句を披露しよう─

「あなたがそう思うのは、もっともです。
もし私があなただったら、やはりそう思うでしょう。」
こう言って話を始めるのだ。
(204p)

人間は一般に、同情をほしがる。
子供は傷口を見せたがる。大人も同様だ─
傷口を見せ、災難や病気の話をする。
ことに手術を受けた時の話などは、事細かに話したがる。
不幸な自分に対して自己憐憫を感じたい気持ちは、程度の差こそあれ、誰にでもあるのだ。
(205p)

解説

同情は誰にでも通用するわけではないが、
世の中の多くの人は同情に飢えているし、
相手に同情することが悪感情から身を守る上で役に立つことは多い。

だからこそ、クレーマー対応など、
怒っている人を宥める場面では
「心中お察しします。」
「あなたのお怒りはごもっともです。」
「もし私があなたの立場だったら私もそう感じるでしょう。」
などの枕詞が欠かすべからざるものとなっているのだろう。

終わりに

以上、D・カーネギー『人を動かす』の要約まとめでした。

時代を超えて支持され続けるものには、
それなりの理由があると言うことで、
特に人間関係の悩みを抱えている人にとっては
一つの光明になりうる一冊ではないかと感じた。

当記事では紹介しきれなかった箇所にも
まだまだ良い教訓が多々あるので、
これで興味を持った方は是非とも本書を読んでみてもらいたいと思う。

ページ数は300ページ弱とそれなりだが、
比較的簡易な文体で書かれているので
2〜3日あれば読破することも難しくないだろう。

以上、ここまでお読みいただき
誠にありがとうございました。

タイトルとURLをコピーしました