この世で一番怖いのはやはり人間だった。SCP-113-KO「永遠の木曜日」の概要と解説

SCP-113-KOのイメージイラストSCP

こんにちは、daimaです。

本日ご紹介するのは
個人的にエグめのSCPが多い印象のある韓国支部より
SCP-113-KO「永遠の木曜日」です。

SCP-113-KO - SCP財団

さて、以前からちょくちょくSCPの紹介を行っている当ブログですが、
私が本日この報告書を皆様にご紹介したいと思った最大の理由は、
私が主に2つの点でこの報告書からかつ類を見ない衝撃を受けたからでした。

その1つは一見無害そうなこのオブジェクトの裏に隠された
人間の底知れない悪意の怖さであり、
そしてもう一点は本報告書を読み終えた後に
ディスカッションを読んで知った
ある衝撃的な事実にまつわる恐怖感です。

ここではまだそれらの詳細は控えておきますが、
本報告書を読んで上記の2点の真相を知った時、
きっとあなたも人間の怖さとその悪意の底知れなさに
心の底から恐怖せずにはいられないことでしょう。

それでは、どうぞ…

SCP-113-KOってどんなSCP?


実験中、Dクラスに提供されたSCP-113-KO-1

SCP-113-KOは韓国のとある
塩業会社のSEOから回収された
1ℓの紙パック入り牛乳に見える物品です。

この物品は破る、燃やすといった
いかなる行為によっても破壊することができず
中の液体は何度注いでも自動で補充される他、
液体を口にした人間にある特徴的な影響を及ぼします。

それはずばり、SCP-113-KOを摂取した人間がいついかなる時も
「今日は木曜日だ」と認識するようになるというもの。

え?
散々前置きで煽った割に効果がしょぼい?

…確かに全宇宙を一瞬で再構築する金属の輪っかやら
全長600kmのウツボやら
現実改変能力者の殺人鬼やらがザラに存在する
SCPワールドの基準で見れば
赤子すら傷つける力を持たないこのオブジェクトが
相対的にしょぼく見えてしまっても
無理からぬことかもしれません。

それに、オブジェクトクラスも
最も収容が容易とされるsafe指定ですしね。

しかしながら
このオブジェクトの本当の怖さは、
単純な字面以上に、
それがどのように使われていたのかを
知ることで初めて理解できる類のものなのです。

それでは引き続き、
このオブジェクトが発見された経緯を見ていきましょう。

SCP-113-KOの正しい使い方

冒頭でも少し触れましたが
財団が回収する以前に
このオブジェクトを所有していたのは
韓国でとある塩業会社で
CEOを務めていた朴██(以下朴CEO)なる人物です。

本人曰く牛乳製造業を営んでいた父親から
SCP-113-KOを受け継いだという朴CEOは
それをとある目的のために活用していました。

その目的とはずばり
彼の会社で働く良質な労働力の確保。

もっと具体的に言うと、
彼は従業員の食事にSCP-113-KOを混入させることで
曜日の感覚を奪い、会社のために土日も休みなく働く
従順な労働マシーンに仕立て上げていたのです。

その手口は非常に巧妙で、
まず「朝食を含んだ食事の提供、
9時出勤、18時退勤、週5日勤務、寮は全員に提供」という
当時の韓国社会では破格の条件で人を集め、
その中から身寄りのない独身者で、
かつSCP-113-KOを飲ませる前提条件として
乳製品にアレルギーのない人物のみを選別して採用。

あとは彼らの日々の食事にSCP-113-KOを混ぜ混むことで、
365日文句も言わず無休で働く
使用者にとっては最高の人材が量産できるという仕組みです。

また、このアノマリーによって信じ込む曜日が
月曜でも金曜でもなく木曜日であるのにも理由があります。

D-3███: 当たり前ですよ、博士。こんなに楽な勤務環境を拒むやつがいる訳ないじゃないですか。(D-3███の流されるような独り言、「まあ、丸めた粘土が一体どこへ向かっているのかはわかりませんが……」)それに今日は木曜日じゃないですか。本当に楽しい限りです。
██博士: 君は木曜日が好きかい?週5日勤務の規定のせいでそうだと言うのなら、金曜がもっと楽しいはずでは?
D-3███: (少し目を細める)そりゃあ、まあ、そうですね。金曜日も最高です! しかしなんというか、金曜日は勤務を終えて休もうとする考えて集中できないんですよ。それと、金曜日の残業って本当にむかつきますよね。それに比べて木曜日は、機嫌がいいおかげか、仕事も上手くできるし、残業もまあ気持ちよくやれちゃうんです。

「SCP-113-KO-1の摂取人物との初インタビュー」より抜粋

つまり木曜日は週末に近い曜日なので
従業員のモチベーションが上がって
結果的に労働生産性がアップするというわけですね。

確かに日頃の自分を思い出してみると
木曜日はもう少し頑張れば週末だという
希望があるので、特に月曜のような
週頭の曜日に比べると
比較的仕事にも身が入っていたような気がします。
(ここは結構個人差ありそうな気もしますが)

このようにSCP-113-KOは
人を雇う側からすると大変都合の良いアイテムなのですが、
一方で使われる側の労働者からすると
悪夢以外の何者でもありません。

自分の労働の対価は不当にピンハネされ、
SCP-113-KOの効果で曜日感覚を失い、
そして何より常軌を逸した過重労働により
あっという間に心と体をボロボロに破壊されてしまうのですから…

大成功した成長企業の真実

報告書中には体の不調を理由として
退職を申し込んだ二人の従業員と
朴CEOとのインタビュー記録が掲載されています。

この記録内容によると
インタビュー対象の一人である
労働者Cは、最低1223日から、最大1342日まで
たった1日の休みもなく働いていたものと見られています。

朴: なるほど、退職をしたいと?木曜日のような良い日にそんな憂鬱な!

労働者C: はい、個人的には非常に残念な決定ですが、体調が少し悪くなってしまったようなのです。食事もちゃんと出してくれて、9時出勤、18時退勤ができる職場は他にありませんでしょうし、なにより、週5日勤務で寮も提供なんてところ、他にありませんよ。
(この時点から労働者Fは不安そうに冷や汗を流しながら、異常に激しい貧乏揺すりをし始めた)

朴: そう、そうか。うちみたいにすごい勤務条件をきっちり守る会社は多くないな。でも、なんで退職しようとする?いっそ少し休暇をやろう。それでどうだ?

労働者C: (CはFに対し咎めるように囁く「君、貧乏揺すりをやめろって、気が散る。」)あ、休みを頂けるのはとてもありがたいことです。ですが、最近体が変に疲れるんですよね。まるで歳を取るのが早くなったみたいです。私はまだ、40代だったと思いますが、最近はまるで自分が80代の老人のように感じます。毎日楽しく仕事していますが、一体どうしてかがわからないんですよね。寮で起きるのも結構辛いですし。あ、特に近頃は、消化不良で朝食の後に食事をすこし吐いたりすることもありました。

「外部記録733X6: 塩業会社███の労働者CとF、二人の退職前インタビューのビデオ記録。」より抜粋

インタビュー内容からは労働者Cが
SCP-113-KOの影響で
自分は週5日勤務のホワイトな職場で働いていると
完全に思い込んでいることが分かります。

しかしそれでも体は正直だったようで、
様々な身体的不調を感じており、
退職を訴え出たのもそれが最大の理由であったようです。

そりゃあまぁ4年近くも
休みゼロで働かされ続けていれば
誰だって何かしらおかしくなろうというものですね。

そして最終的にこのインタビューにおいて
朴CEOは労働者Cの退職を許可するのですが、
一方で連続勤務日数34日という
ずっと短い日数で退職を訴えてきた
もう一人の労働者Fに関しては少々事情が異なるようでした。

朴: (「クソッ、大変だった」と小さく呟く。労働者Fを見て、無関心な表情で)あ、そう。君も退職したいって言ったな?わかったから、そうしたらいい。

労働者F: (気が抜けたようにぼうっとしている)あ、ありがとうございます。それでは、退出させていただきます。
(しかし労働者Fは、インタビュー場を出ずに、何かを決心した様子で振り向く)

労働者F: あの、もしかして今日、日曜日じゃあないですか?

朴: (目を細める)それはまたなぜそんなことを言う?

労働者F: (非常に早口になる)いいえ、会社の方針なのは知っていますけれども、それが……今日は日曜なんです!その牛乳、一体どこから持ってくるんですか?実はですね、はじめて入社したときもおかしいと思ったんですよ。職員の方たちが非常に明るかったんです。まあ、大きい問題ではありませんでしたけど、それが……その……僕もいつの間にかそれを飲んでからは少しおかしくなり始めましてね。今日はきっと木曜日ではなかったはずですけど、工場のみんなは木曜日だって言うんですよ。で、昨日働いてたかもよく覚えてないし……とにかくそれが喉を通る瞬間から、なんか変なんです。(2秒間の沈黙)個人的に、食品医薬品安全処で働いてるやつに確認してもらおうとサンプルを送ってみましたけどね――

「外部記録733X6: 塩業会社███の労働者CとF、二人の退職前インタビューのビデオ記録。」より抜粋

あ…

朴: (遮って割り込む)君、朝飯抜いて数日経っただろう?

労働者F: (びっくりする)あれ、それどうしてわかったんですか?

朴: (余裕満々な笑顔)君と同じ話をしてた労働者が前にいてね。朝飯を抜いてから何日くらい経った?
労働者F: (少し迷う)3日、4日?くらいです。どうしたんですか?

(鳴り響く重い拳銃の発砲音、悲鳴、カメラが激しく床に倒れ、インタビュー場の天井を映しだす)
朴: 会社の定款違反だよ、クソずる賢いやつめ。

「外部記録733X6: 塩業会社███の労働者CとF、二人の退職前インタビューのビデオ記録。」より抜粋

まさに外道。

従業員の労働力を搾取するだけにとどまらず、
自分の不利益になると判断したら問答無用で口封じするこの冷酷さ!

まさに吐き気を催す邪悪というやつですね。

対象者がもし今日が木曜日ではないと気づいたらどうなるか?

このように使い方次第で
凶悪な効果を発揮する邪悪なSCP-113-KOですが、
私は報告書の内容を読む中である一つの疑問を感じました。

それは、
「いくら寮住まいの独身者のみを
ターゲットにしていたとはいえ、
日常生活のどこかで従業員たちが
曜日の矛盾に気づく機会があったんじゃないだろうか?」

という素朴な疑問です。

普通に暮らしていればテレビや新聞など
本来の曜日を知る機会は幾らでもありますし、
従業員たちが自分はまともな
ホワイト企業で働いているという
自覚を持っていたことから
それらの情報を無理やり制限していたという可能性も
考え辛いことですからね。

SCP-113-KOを摂取した対象が
偶然、または故意に正しい曜日を知らされた時、
果たして何が起きるのか?

その答えは財団が実施したいくつかの
実験記録に示されています。

実験1 摂取者に今日は木曜日ではないと伝える

最初の実験はSCP-113-KOの摂取者に
今日は木曜日ではないと
言葉で伝えるストレートな試みです。

██博士: ところで今日は、実は木曜日じゃなくて土曜日じゃないかな? 君は勘違いしているようだよ。

D-3███: (席から立ち上がり、暴力的な兆候を見せる)なんですって?なにをそんな、少しの面白みもないたわごとをほざいてるんですか?今日は木曜日です。寝言は寝ていってください。今日は木曜です。木曜なんだ。木曜なんだよ!

(この後、D-3███は██博士の手と首を数回に渡り噛みちぎり、拳と足を利用し暴力を加え、全治6週の傷害を加えた。保安担当官3人が出動し、D-3███を引き離した。以降のインタビューにおいては、最少5人以上の保安担当官が配置されることが提案された。D-3███は約3時間後、平静を取り戻すことができた。インタビューが行われたという事実は覚えていなかった。)

なんということでしょう。

実験担当者から真実を伝えられた摂取者は
まるで神を否定された狂信者の如く激怒し、
博士に大怪我を追わせるという蛮行に及びました。

どうやらSCP-113-KOには
ただ今日が木曜だと思い込ませるだけではなく、
木曜日に対する
異常なまでの愛着を抱かせる作用もあるようです。

ちなみにこの博士、曜日の間違いを指摘したのは
実験監督者の指示を受けてのことでしたが、
それまでの摂取者の態度に不安を覚えて
一度はその指示を拒否していました。

その上でこんな結果になってしまったのだから
仕事とはいえ本当に可哀想という他ないですね。

実験2 摂取者に合理的な証拠を示した上で今日が木曜日ではないと伝える

続いての実験は、否定のしようのない
客観的な証拠付きで今日が木曜日ではないことを
摂取者に伝えた場合の反応を見るものです。

…先の結果を知っているだけに
既に嫌な予感しかしませんね

ちなみに財団の人員不足により
今回も前回と同じ博士がインタビュアー役を担当しています。

██博士: (誇張された口調)クソのどかで明るくクールな木曜日だな!そうだろう、D-1███?

D-1███: (明るく微笑む)あ、はい。博士。今日はまさに働き日和ですね。あれ、何箇所か包帯されてますね、お怪我ですか?

██博士: 曜日狂信者というやつにやられたんだが、まあそんな大袈裟なものではない。君、マンデーソウルの愛読者だそうだね。あの、月曜日ごとに出る週刊誌の。

D-1███: もちろんですとも!大学のころから読んでますけど、マンデーソウルの編集長は25年も同じ人だそうですよ。その人の編集方針や、問題意識がお気に入りなんです。寸鉄人を刺すって感じですね。それで、今日読んだマンデーソウルなんですけど――

今回のインタビューも滑り出しは平和です。

どうやら会話の中に出てきた
「毎週月曜日に」発行されている
マンデーソウルという雑誌の存在が
木曜日否定のための合理的な証拠になるようですね。

██博士: (遮る)そう!君、今日マンデーソウルを貰ったよな?

D-1███: はい?

██博士: マンデーソウルが配布されるのは月曜だろう?

D-1███: そうなんですけど?

██博士: (自信満々げに)今日は何曜日だい?

(質問に答えていたD-1███の動きが発作を起こしたように停止する。口を開けて、目を開いたまま8秒間停止。瞳孔は拡張され続ける)

██博士: D-1███?

(D-1███が頓狂な声で「木曜日に決まってんだろうがクソ野郎があああ!」と叫びながら██博士に飛び掛る。配置された保安担当官が直ちに行動し、D-1███の阻止を試みる。数回の銃声の後、苦痛による悲鳴が鳴り響くが、これらは保安担当官たちと██博士のものである。)

〈録音終了、██月██日月曜日、午後3時22分〉

██博士と6人の保安担当官はインタビュー場所で即死した。D-1███は異常な怪力と生命力を獲得しており、D-1███の制圧のため、██人の対応チームが緊急投入された。D-1███は数百発の銃弾で終了した。

あーあもうめちゃくちゃだよ(呆れ)

理詰めで自分の進行を論破された実験対象者は
常人離れした予想外の馬鹿力を発揮し、
実験は最終的に可哀想な██博士と終了された実験対象者を含む
8人もの尊い命が失われるという惨憺たる結果で終了。

反応を記録するという実験の目的こそ果たしたものの、
財団はその安全管理の甘さ故に
ただでさえ人員不足の状況で
さらに人員を失うという失態を犯したのでした。

しかしこうした反応を見るに、
SCP-113-KOは完全に労働者を
囲い込んで使うことを前提に作られているようです。

曜日の話題が出るたびにこんな騒動を起こすのでは
外でまともな生活が送れるはずも有りませんからね。

実験3 偶然を装って今日が木曜日ではないと伝える

3例目の実験は、摂取者が偶然
今日は木曜日ではないという情報を得た場合の反応を見る実験です。

先に私が挙げた疑問の直接の答えとなる実験ですが、
さてさて今度は一体何が起きるのでしょうか…

観察対象: [D-3███、28歳、東洋系の女性、身長164cm、怠慢な性格、先日の残業の後、退勤時、午前01時12分にSCP-113-KO-1が提供された。]

付記: D-4███には実験のため、特殊制作したアラームが提供された。アラームはLEDを利用した最新電子式アラーム時計で、特に曜日を表すところは濃い赤色で表示される。アラームが鳴るとき、曜日を知らせる信号音も発生する。

実験の概要を確認。
アラーム時計で人を介さずに曜日を知らせるようです。

(実験対象の部屋の中。対象の頭上のアラームから、朝を知らせる電子音楽が鳴り響く)

D-4███: (ベッドに横たわる。面倒くさそうに、体をすこし起こしながらアラームを確認する)あ……今日、何曜日だっけな?もっと寝たい。働きたくない。

(アラームでは、月曜日であることを知らせる「MON」が赤い灯で表示される)

アラーム: (明確で的確な東洋系女性の発音で)今日は、██月、██日、月曜日です。

(アラームが2秒間静まる)

アラーム: (明確で的確な東洋系女性の発音で)月曜日です。月曜日です。月曜日です。月曜日です。月曜日です。月曜日です。

アラームが今日が月曜日であることを通知。
気になる実験対象の反応は…

(D-4███は起きて、眠たい目でアラームを凝視する。アラームは発作的に、「月曜日です」を30秒間繰り返した後、停止する)

(3秒の間の静寂、以後、実験対象は目をこすり、表情が突然明るくなり、微笑む)

D-4███: けど今日は木曜日だから!

(D-4███が洗面のため、ベッドから起きて嬉しそうなリズムで部屋から飛び出る。)

しかしDクラス意外にもこれをスルー。

前回同様ブチ切れるのかと思いきや、
完璧なまでのスルースキルを発揮し
今日が木曜日だという思い込みをキープし続けました。

先程の怒りと併せて、木曜日否定に対する
防衛反応には少なくとも二種類あることが分かりましたが、
どちらにせよこれなら確かに
新聞やテレビなどの情報を許可した場合でも
木曜日の矛盾が摂取者に気づかれる心配が無いというわけですね。

実験4 摂取者が働き続けられる限界についての調査

財団はSCP-113-KOを摂取した人間が
何日間連続で働き続けられるのかについての実験も行っていました。

観察対象: 実験に投入されたDクラス全員。行われる実験がどれだけ持続可能かに関する実験と、様々な終末期症状の確認。最後の残存人物のD-9███が████日の間、実験を継続させており、実験は現在も進行中。

終了報告書: Dクラス人員は、実験初期には非常に高い業務効率と成果を見せ、その上自発的に工場のベルトコンベアの構造を更に効率的なものに修正させるなど、積極的な態度を見せていた。しかし、実験開始から[編集済]日が経過すると、対象は記憶の喪失、急激な老化、精神障害などの多様な障害を見せて実験継続を諦めた。最終的に、実験に約2000日以上参加した人物は共通に以後、SCP-113-KO-1の摂取が中止されているにも関わらず、曜日感覚を永久に失った。

後程、南宮(ナングン)██研究員が業務効率の向上のため、財団の主なる研究員たちへにSCP-113-KO-1を摂取させる案を提案した。しかし、その危険性により、実験は無期限延期された。

Dクラスに対するこの一切の慈悲のなさ。
財団は今日も平常運転でした(皮肉)。

まぁDクラスの扱いの酷さはさておき、
やはり休みなしの労働は
健康上の深刻な問題を引き起こすようですね。

こういう話を読むと、
つくづくSCP-113-KOを平気で人間に使える
朴CEOのような人間が
現実の存在でなくて良かったと思えます。

南宮研究員の暴走

SCP-113-KOについての説明はこれで全てであり、
報告書は最後にサイト理事官による
次のもっともな言葉によって締めくくられています。

どう見てもなんの役にも立たないものを、ここまでして悪用しようとする人間の悪意こそが恐ろしい。

SCP-113-KOの製造日付が「197█年1月13日木曜日」であることがその特徴に影響を与えているのであると推定するならば、同じ工場で生産された「別の曜日シリーズ」が存在する可能性は排除し難い。
もしそれらが存在するならば、今回のように「適切な勤務条件」を追加され、どこかで悪用が繰り返されている可能性もまた高いだろう。
直ちに追加調査を行うこと。

しかしSCP-113-KOの話にはまだ続きがあります。

実は、先の実験4でちょろっと名前が出てきた
南宮(ナングン)研究員が、
報告書末尾からリンクされている以下のtaleの中で
SCP-113-KOに関連した
あるとんでもない騒動を起こしていたのです。

SCP-113-KO事件記録: 木曜日爆弾 - SCP財団

その詳細は実際に
taleの内容を読んでいただくとして、
時間のない方のために
要点だけを手短に記しておくと
おそらく財団に関連する何らかの異常な手段で
北朝鮮の核実験場に侵入した南宮(ナングン)研究員は
そこでSCP-113-KOと自身が"訓練"した
数名のDクラス職員を用いて実験場を爆破しました。

研究員が核実験施設の任意の地点にDクラス人員を連れて行って指示した内容は以下の通りです。
1. 「月、火、水、金、土、日」を反復しながら呟くこと。2. 支給された腕時計が鳴ったら、直ちにこの牛乳(SCP-113-KO-1)を飲むこと。3. そして今日は水曜日なので、「今日は水曜日!」と言うこと。

つまり彼はSCP-113-KOがもたらす
木曜日否定への防衛反応を極限まで強化して
一種の人間爆弾を作り上げたというわけですね。

ちなみに全ての元凶である南宮研究員は
この実験の直後悪びれるどころか
非常に興奮した様子で
実験の結果を財団側に自ら報告したそうです。
なんでこんな奴を採用したんだ…

そしてこの事件は当然ながら
朝鮮半島のみならず世界情勢にまで
大きな影響を及ぼすこととなり、
事態を重く見た財団司令部は
南宮研究員に対する第1級記憶処理、
および財団からの永久追放を決定したのでした。
(そもそもこれだけのことをしでかしておいて
終了処分されなかったことが奇跡に近いですけどね。)

このように財団にとっては
頭を抱えたくなるような一連の出来事ですが、
最初は無害そのものに見えたアノマリーが
実はとんでもない副作用を秘めていたというのは
なんともSCPらしくて面白い話だと思います。

本当の恐怖はこれからだ

さて、SCP-113-KOに関するお話は以上でお終いです。

一見無害そうなふりして
実はヤバい効果を隠し持っていた
SCP-113-KOの存在もそうですが、
何よりそれを私利私欲のために平気で他人に使える
朴CEOの非人間性が恐ろしかったですね。

朴CEOの会社の従業員や
殉職した博士に犠牲となったDクラス、
ついでにSCP-113-KOを取り上げられて
速攻で会社が倒産した朴CEOも含めて
最終的に誰も幸せにならなかった今回の報告書ですが、
我々にとってひとつ救いがあるとするならば
朴CEOのような極悪人が架空の存在であって、
()()に存在するわけではないということでしょうか。

そう、現実には…

ん?

あっ(察し)

人身売買の仲介業者は、知的障害者に食事も十分に提供する雇用先があると紹介し、全羅南道新安郡の塩田業者に10万ウォンから30万ウォン(事件発覚当時の日本円で約9300 - 28000円)で売却していた。被害者のなかにはソウル駅でホームレスをしていたら声をかけられた者もいた。

現場となった塩田は新衣島など離島にあり、韓国での天日干しの高級塩は、ほとんどこの全羅南道新安郡で作られ、ブランド品となっていた。このうち大規模塩田所有者が知的障害者を奴隷として扱っていた[4]。

知的障害者の労働者は監禁され、さらに塩田労働に対して賃金は一切支払われていなかった。労働者は納屋・エアコンのない倉庫で約5時間の睡眠時間を与えられて生活し、食事は粗末で、脱走を図った者は捕まえられスコップや鉄パイプ、角材でリンチされた。骨折の治療も受けられずに、片足切断の体で働かされている被害者もいた。脱走した被害者は島民によって事業主に報告され、再び連行された[2]。

塩を作らない季節は養魚場や建設現場での労働に従事させられていた。

被害者数は100人以上にのぼった。

塩田業者は知的障害者の労働者に対して、「自分はここで働くしかないのだ」と思い込むよう洗脳したとされる。

wikipedia – 新安塩田奴隷労働事件 より抜粋

おまえら人間じゃねぇ!(憤怒)

不勉強ながら私は今回の報告書を通じて
この事件を初めて知ったわけですが、
wikiで事件の概要を読んでもなお
こんな酷いことが21世紀の先進国で
(障害者差別が根強い韓国社会の特性もあったとはいえ)
本当に起きていたのかと、その事実をすぐに信じることができませんでした。

一応退職願には応じてくれるし、
始末するときも一思いにやってくれる分
朴CEOの方がまだマシだというのが
本当にひどすぎてもはや
乾いた笑いすら漏れてくる始末です。

おわりに

平凡なオブジェクトを通じて
人間の怖さを巧みに描いた
秀逸な内容だと感心していたら
最後の最後で思いがけず
現実の搾取と格差の問題について
考えさせられることとなった今回の報告書。

報告書の舞台は韓国でしたが、
社会における格差の広がりは
私たち日本人にとっても
もちろん他人事ではありませんよね。

一方でSNSで気まぐれに100万円をばらまく金持ちがいるかと思えば
一方で法外な給与で酷使される外国人労働者や
安アパートで餓死する貧困家庭の子供もいる。

このような大きな問題に対して
私たち一人ひとりにできることは少ないかもしれないですが、
身近なところからでも少しづつ
不平等を解消する行動に参加できればと強く思いました…

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