たった400文字の衝撃。SCP-4465「人間は一人では生きていけない(No man is an island)」のネタバレ解説

  • 2019年12月13日
  • 2020年4月27日
  • SCP

SCP-4465 人間は一人では生きていけない(No man is an island)

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image by Ken Lunde, http://lundestudio.com

SCP財団の本家サイトにて
250を超えるup voteを獲得し
2019年5月のTop Rated Pagesで第二位にランクインした
SCP-4465 No Man is an Island(人間は一人では生きていけない)

ja.scp-wiki.net

しかしながらこのSCP、
報告書に目を通すと
まず最初に気がつくのが
その異様なまでの文章量の少なさです。

その文字数はなんと
わずか400文字(日本語版)以下
という驚きの短さ。

本日はこの風変わりなSCPについて、
本文中の記述と執筆者の発言を元に
その裏に隠された本当の意味を
解説してみたいと思います。

報告書の中身をおさらい

それでは順番に
SCP-4465の報告書の内容を読んでみましょう。

アイテム番号: SCP-4465
オブジェクトクラス: Safe

まずはお決まりの
アイテム番号とオブジェクトクラスです。

オブジェクトクラスがSafeなので
このSCiPには既に安全な収容法が
確立されていて、保管方法を間違わなければ
害がないオブジェクトであることが分かります。

特別収容プロトコル: SCP-4465は安全収容ロッカーに収容されています。

収容方法は至って簡潔。
財団施設内のロッカーの中に入れておくだけ。

ちなみにここでいう
安全収容ロッカーとはおそらく
SCP-714、SCP-860、マッケンジー博士の収容手順
などで言及されているものと同一か
あるいは類似の装置でしょう。

標準収容ロッカー
大量の自主的な移動能力を持たないSCPオブジェクトにとってのもっともらしい収容は、「箱に入れて鍵をかけて余計なことはするな」に毛の生えた程度のものになります。このようなオブジェクトは、ただ「標準収容ロッカー」にあるとするのが良いでしょう。
どのように構成されているのかイメージしたいのであれば、それぞれのロッカーが一つの、一つだけの異常なオブジェクトを収容している、学校のロッカーの大きさをした密閉式の金庫でいっぱいの部屋を想像してください。標準的な収容ロッカーを備えた施設では、必要とされる監視は基本的に最小限です。金庫ごとにカメラを設置する必要もなく、一式の監視カメラで簡単に部屋全体を監視することができ、金庫ごとに警備員を配備する必要もなく、一つの監視所でそれらしく部門全体への出入りを制限できます。

「マッケンジー博士の収容手順」より引用

ロッカーに保管されるオブジェクトが
safeであることからもやはり
SCP-4465はそれほど危険な存在では
ないように思えます。

説明: SCP-4465はグロック17のピストルです。

外観の説明。
これもたった一行と言う簡潔さ。

ちなみにグロック17とは
1980年代にグロック社が開発した
安価な軍用拳銃であり、
米国のガンショップならどこでも置いてある
ごく一般的な拳銃です。

SCP-4465の正確な特性は不明です。
テストは翌月に予定されています。

話の肝である
SCiPの特性は全てが不明とのこと。

オブジェクトが持つ特性の解明は
財団の重要な使命の一つであり、
このような書き方は
かなり珍しいのではないでしょうか。

SCP-4465は手首からの
大量失血により自殺した
アーノルド・デュバーの遺体と共に
アパートで発見されました。

SCP-4465が発見された
状況が語られます。

SCP-4465は手首を切って自殺した
男性のそばで発見されたとのことで、
なにやら急に不穏な気配が漂ってきました

彼の遺体が発見される3日前、
彼の大学のルームメイト、
彼の母親、そして彼のペットの犬は皆、
お互いに10分以内に
口蓋から後頭部にかけて
同一の銃創を受けていました。
弾丸はSCP-4465の
マガジンのものと一致しました。

ここにきて状況は一気に
混迷を深めます。

アーノルドの遺体発見の3日前に、
アーノルドと近い関係を持つ
二人と一匹が、揃って
10分以内という短い時間の間に
拳銃を口にくわえて発砲した時に
できるような傷を負って
死亡していたというのです。

この箇所を初めて読んだ時、
わたしの頭をよぎったシナリオは
アーノルドが犠牲者たちを銃殺した後、
自分の手首を切って
自殺したのではないかというものでした。

しかしこの考えは
まるで犠牲者たち全員が
ピストル自殺したかのように
口内に銃弾を受けて死んでいたことと
全員が10分という短い時間の間に
死んでいることを考えると
どうにも辻褄が合いそうにありません。

その上このシナリオは
次の一文によって
さらに強く否定されてしまいます。

アーノルド・デュバーは
最も近い犠牲者から
3,000キロメートル離れた場所にいました。

なんとアーノルドの遺体の発見場所が
最も近い犠牲者からすら
3000キロメートルも
離れた位置だった
というのです。

一応、殺害から自殺まで
最大3日という猶予があったことを考えれば、
犠牲者たちを殺害したあと
飛行機などの移動手段を使って
3,000キロ移動してから
自殺することも原理的に不可能ではありません。

ですが、身近な人間を相次いで殺害し、
これから自殺しようと言う人間が
どうしてわざわざそんなことをするでしょうか?

凶行を犯した後、
自殺するのが怖くて悩んだのか?
一度逃亡しようとして諦めたのか?
そもそもなぜ自殺を手元にある拳銃ではなく
わざわざ刃物で手首を切るという方法で行ったのか?

ここまでで報告書の9割以上を
読み終えたことになりますが
謎は解けるどころかますます深まるばかり。

これらの情報に一貫した解釈を与えるカギは
どうやら報告書末尾にプルダウンで隠された
実験記録にありそうです。

SCP-4465実験記録
実験は倫理的懸念のため中止されました。

『倫理的懸念』のため中止?

任務のためなら
ねずみ算で増殖し続けるケーキ
大量のDクラス職員に食わせ続けようが
Dクラス職員に触れた人間のあらゆる怪我を一瞬で直す像をくっつけて血液を無限に採取するための
人間血液タンクに魔改造しようが
微塵も意に介さなかったあの財団が
倫理性を理由に実験を中止したというのです。

もし財団が本当に倫理的な原因で
実験を中止せざるをなかったとすると、
あり得そうな理由としては
SCP-4465を用いた実験の犠牲者が
Dクラス職員に止まらず
財団外部の一般人を巻き込む性質のものだったから
というケースが考えられます。

そしてこの推測と
先述したアーノルドの死の状況を合わせて考えると
報告書には明記されなかった
SCP-4465の持つ真の異常性が
朧げに浮かび上がってきます。

以下ネタバレ

結論から述べるとSCP-4465の正体は
「撃たれた人間の愛するものを代わりに撃つ銃」です。

It’s a gun that kills loved ones of the target shot.
(その銃は撃たれたものの愛するものを殺す銃です)

本家記事のDiscussより引用

執筆者自身がこう述べているのだから
ここはまず間違い無いでしょう。

次にこの銃がどうやって
遠く離れた位置の「愛するもの」を
殺すのかについては想像の域を出ませんが
おそらく狙撃の瞬間に銃身か銃弾のみが
テレポートして犠牲者を撃つものと推察されます。

そしてこのSCPが持つ異常性は
実はそのタイトルの部分で既に
さりげなく仄めかされていました。

誰も孤島ではない

16世紀イギリスの詩人、
ジョン・ダンの詩に
「No man is an island」という
英語版の本SCPのタイトルと
全く同じ書き出しで始まる一節があります

No man is an island entire of itself; every man
is a piece of the continent, a part of the main;
if a clod be washed away by the sea, Europe
is the less, as well as if a promontory were, as
well as any manner of thy friends or of thine
own were; any man’s death diminishes me,
because I am involved in mankind.
And therefore never send to know for whom
the bell tolls; it tolls for thee.

— No Man is an Island, by John Donne

(人間は孤島ではない。
あらゆる人間が大陸の一部であり、
全体の一部である。
一塊の土塊が海に洗われて流されれば
ヨーロッパはそれだけ縮小する。
ちょうど半島が縮小するように、
ちょうど君の友人や君自身の領地が減っていくように。
誰かの死が私自身を減少させるのは
私もまた人間たちの一部だからだ。
ゆえに誰のために弔鐘が鳴ったのか
知ろうとしてはいけない。
鐘は君のためにこそ鳴るのだ。

— ジョン・ダン『誰も孤島ではない』より)

この詩は全ての人間が
全体の一部であるという
個人のかけがえのなさを表した詩ですが
私は著者がSCP-4465という
残酷な性質を持つオブジェクトに
あえてこのようなポジティブな
詩を冠したことには、
「自殺はその人だけでなく
その人を愛する人をも傷つける」

というメッセージ性を含める狙いが
あったのではと解釈しています。

アーノルドは確信犯だったのか?

最後に
執筆者が明らかにしていない部分の中でも
特に私が関心を抱いているのが
アーノルドは果たして、
SCP-4465の持つ異常性を知った上で
その引き金を引いたかどうか

という点です。

もし認知せず引いたのならば
アーノルドはそれと知らず
自分の愛する人々を銃殺したことになりますが
もし認知した上で引いたとしたら
アーノルドは自分の自殺の道連れに
自分の愛する人たちを銃殺した
という
物凄く後味の悪いストーリーを
想像をすることができてしまいます。

個人的には前者の可能性を推したいですが
詳細が読み手の想像に委ねられている以上
後者の可能性も完全には否定できないですね…

またこの銃はその性質上、
下手に扱うと財団にとって
ものすごく危険な存在になり得ます。

なぜなら撃たれたものの
愛する人を撃つと言うならば
極端な話、財団に敵対する危険団体が
O-5のような重要なポジションの人物を
愛する人物を見つけ出してこれを
SCP-4465で狙撃すれば、
距離も位置も問わずにターゲットを暗殺することが
できてしまいかねないからです。

もしその可能性が本当ならば、
こんな厄介な代物は
いっそにSCP-280-JPでも放り込んでしまった方が
いいのかもしれませんね(プロトコル開始

おわりに

あえて多くを語らないことで
読み手の想像力を刺激し、
Less is moreを地で行ったこのSCP。

本家で高い評価を
受けたのも納得のセンスでしたね。

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