まるで読む悪夢。異次元の恐怖が味わえるSCP報告書4選

SCP-6096を撮影した写真SCP

はじめに

恐怖。

古来より生物が生存のために発達させてきたこの感情は、
出来ることならば味わわずに済ませたいものとして忌避される一方で、
怪談話や恐怖体験が常に人々の関心を集めてきた事実が示すように
それ自体に私たちを惹きつける抗い難い魅力があることもまた事実です。

そして本日はそんな『恐怖』をテーマとして、
SCP財団ならではの異次元的な恐怖感を味わえる、
『読む悪夢』とでも呼ぶべき選りすぐりのSCP報告書を全部で6本ご紹介します。

ご紹介する内容は、
ウクライナの立ち入り禁止地区にある不気味な無人駐車場についての報告書や
一見意味不明でありながら意味がわかると初めて恐怖が湧き上がってくる報告書、
あるいは論理を超越した、脳みそを掻き回されるような独創的な悪夢世界を描いた報告書など
どれも創意工夫に富んだものばかり。

それでは、どうぞ…

SCP-3074 『カフカの駐車場』

scp-3074の内観
▲SCP-3074

区画、ゾーン、数字または文字。

SCP-3074 - SCP財団

オブジェクトクラス : Euclid

駐車場って…怖くない?

突然ですが、あなたは
デパートなどにある広めの屋内駐車場に対して
恐怖感を抱いた経験があるでしょうか。

人によってはピンとこないかもしれないですが、
あの独特な無機質さや薄暗さ、
陰に何か隠れていそうな入り組んだ鉄骨の構造などには
人間の本能的な恐怖心をくすぐる何かがあるように私は思うのです。

そしてこの報告書で描かれるのは
そんな駐車場特有の不気味さをベースとして
そこにカフカ的不条理の恐怖感をミックスした
全く新しい恐怖体験なのです…

SCP-3074の概要

SCP-3074は、ウクライナのプリピャチという街にある
とあるオフィスビルの地下に存在するという駐車場です。

プリピャチという街について
聞いたことのある方はあまり多くないと思うので補足しておくと
この町はかつてチェルノブイリ原発事故の影響を受け、
以来現在に至るまでずっと無人となっている街です。

プリピャチの町の写真

廃墟となったプリピャチの風景。奥に見えるのがチェルノブイリ原子力発電所跡。

そして、そんな曰く付きの街に存在するという
SCP-3074もまた曰く付きの駐車場であり、
ここへと降りていく唯一のエレベーターに乗った人々が
次々に神隠しに遭う怪奇事件が多発していたのでした。

この不気味な噂を聞きつけた財団は
ウクライナ政府の協力のもと調査を開始。

それによってSCP-3074が持つ
以下の性質が明らかとなったのでした。

  • SCP-3074の内部にアクセスする貨物エレベーター(SCP-3074-A)にはボタンがひとつしかなく、それを押すとSCP-3074の第一階層に向けて下降する。
  • SCP-3074-A以外でSCP-3074に入場する方法は見つかっていない。
  • SCP-3074-Aの下降が始まった時点でGPS信号を介した乗員の位置特定は不可能になる(携帯電話や無線での意思疎通は可能)
  • SCP-3074-AはSCP-3074に到着後内部が完全に空になりドアが閉鎖されるまで地上に帰還しない。つまり乗ってきた人間はそこに閉じ込められる形になる。
  • SCP-3074の各階には受話器、キーパッド、LCDスクリーン、コインスロット、プリンター、指示書きを備えた電子キオスク(SCP-3074-B)が設置されている。
  • SCP-3074-Bの受話器を持ち上げると内線の呼び出し音声が3度なった後に正体不明の実態の声(SCP-3074-C)が応答する。
  • SCP-3074の各階層には215台分の駐車スペースがある。
  • SCP-3074の各階層の北端には下の階層へと降る道がある。
  • 階を降るごとに破損した照明器具、動作しないSCP-3074-B実例、廃車で構築されたバリケードなど、劣化と機能不全の徴候が増えていく。
  • SCP-3074が地下何階層まで存在するかは不明だが、少なくとも100階層は優に上回ることが示唆されている。

電話器の写真
▲SCP-3074-B実例の一つ。

そして…これらの情報に加えて重要な手がかりとなるのが
現場の上階のオフィスビルの内部で発見された
一本のコンパクト・カセットテープの存在です。

カセットテープに残された記録

問題のカセットテープに残されていたのは、
かつてSCP-3074に迷い込んだ人物のものと思しき以下の音声記録でした。

[記録開始]

声1: もしもし?

声2: [不明瞭。]

声1: 誰かそこに—

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。3

声1: 何だって? 俺には何だかよく—

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 理解できん。何を言ってるんだ?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: それを止めろ。

[沈黙。]

声1: もしもし?

声2: [溜め息。]

声1: 俺と話をしてくれ。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 俺と話をしろって言ってんだよ! なぁ、俺はここに閉じ込められてんだぞ、助けが要—

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: クソ野郎。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1は迷い込んだ側の男性、
声2は先ほどの説明に出てきたSCP-3074-Cです。

状況的には、偶然SCP-3074に迷い込んでしまった
一般男性が受話器を通じて助けを求めたものの
帰ってくるのは『区画、ゾーン、数字または文字』
という意味不明な文言の繰り返しばかりで会話にならず
とうとうキレてしまったといったところでしょうか。

この男性がなぜ、封鎖区域内であるはずの
SCP-3074に迷い込んで来れたかは謎ですが、
それはさておきエレベーターが故障して閉じ込められた状況で
こんな対応をされてはキレてしまうのも仕方ないというのが普通の感覚ですね。

声1: 会話をしろよ!

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: ブチ殺してやる。聞こえたか? 絶対にお前を見付けてブチ殺してやるからな。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: この、おま— クソビッチめ。クソビッチ。もう死ねよお前。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 誰かが俺を助けに来てくれるさ。誰かが来て、お前を逮捕する。そんでお前は銃殺されちまえばいい。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

[記録開始]

声1: もしもし。

[沈黙。]

声1: あの… ビッチとか言ってすまなかった。殺すって脅した件も申し訳ない。あんな事はすべきじゃなかったよ。

[沈黙。]

声1: 俺をここから出してくれないか。じゃなきゃ誰かを派遣して連れ帰らせてくれ。それか— 俺と会話してくれ。普通の話をしよう。お願いだ、何が起きてるのかを教えてくれよ。人間らしく俺に話しかけてくれ。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

あまりにも同じ文言しか繰り返さないので
機械録音なのかと思いきや
場合によっては黙りこくることもあることから
受話器の先に居るのはどうやら生きた人間のようですが
それはそれでむしろ余計に不気味な感じです。

そしてもうひとつ、ここを境に
それまで一方的にキレ散らかしていた男性の態度に
少しづつですが明らかな変化が生じ始めます。

声1: そこにいるのか? 俺は正しいのか? これはある種の実験か? もしそうだとしたら俺はどうすればいい? お前は俺をどうしたい?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: それはお前なりのイエスって返事か?

声2: [溜め息] 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: オーケイ。俺はどうすればいい? お前は俺にどうしてほしい?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 降りたほうが良いのか?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 分かったよ。 …降りてみる。

声1: 地下7階から電話してる。全部の階に問い合わせ電話があるんだな。知ってたか? 俺は知らなかったよ。1階にある1台だけだと思ってた。それはそうと、俺は今7階にいる。もっと沢山の放置車両以外には何もない。何台かはかなり古そうだ。

[沈黙。]

少し落ち着きを見せ、とりあえず下へと進んでみる男性。
SCP-3074-Cの対応は相変わらずですが…

声1: 嫌な臭いもする。何なのかはよく分からない、でも—

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: うん、そうだな、実は何なのか分かってる。すまない。ああしなきゃいけなかったんだ。他に選択肢が無かった。だってどこまで降りても便所が無いんだぞ? それで、もうこれ以上堪え切れなくなって、で—

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 隅っこで済ませた。掃除が簡単そうな場所に。簡単ならいいなと思ってる。すまない。

[沈黙]

まぁ生きてるとそういう問題はあるよね…
この場面、SCP-3074-Cの心の内は不明ですが
ぱっと見絶句しているように見えるのがちょっと面白い。

声1: 俺はこの地下で一人きりじゃなさそうだ。俺—

[遠くでピアノ音楽が聞こえる。]

声1: それは何だ? 今俺が聞いてるのは何だよ? それは— 音楽か?

声2: [くぐもった声、不明瞭]

[ピアノ音楽が停止する。]

声1: お前、音楽を聴いてたのか? あれはどういう種類の音楽だ? 俺には覚えが無いな。音楽を聴くのか? 音楽が好きなのか? どういう音楽が好きだ?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 時々、カサカサ動くような音が聞こえる。目の端に何かの形が見えるような気もする。デカい形だ。具体的に何かってのは分からないんだが—

[ガサガサという音。]

声1: もしもし?

声3: [遠距離からの声、不明瞭]

声2: [遠距離からの笑い声]

声1: だ… 誰かが一緒にそこにいるのか?

声2: [遠距離からの声、不明瞭]

声1: 誰かと会話してるのか? 何か話すような話題があるのか?

声2: [咳払い] 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: 誰か他の奴と話してたな。誰と話してたんだ?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: なんでその男には口を利くのに俺とは話さないんだ? 奴はお前の友達か?

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: それは… それはズルいだろ。そいつとは会話をするのに、俺とは会話しないって? 俺と話すことの何が悪いってんだ? 何で俺と話してくれないんだ?

所々ボロを出しかけるものの
頑なに男性との会話はしないSCP-3074-C。

そして何か怪しいものの影を
見たと訴える男性。

ひたすら不気味ですね…

声1: 懐中電灯はまだ点くけど、バッテリーは切れかけてるだろう。新品がないか車の中を探すのに使い続けてるからな。それで — 銃を見つけた、ダッシュボードの小物入れからだ。拳銃。今まで見たこと無かった。現実の人生では。映画の中でだけだった。

車両の中から拳銃を発見する男性。
なんだか嫌な予感が…

声1: その、ちょっとやってみたい事があるんだ。すまない。俺の家族にすまなかったと伝えてくれ。母さんにすまなかったと伝えてくれ。妹にも — 皆に愛していると伝えてくれ。すまなかったと伝えてくれ。お願いだ、すまなかったと伝えてくれないか。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: すまなかった。

声1: [押し殺した啜り泣き] 銃弾がねぇや。

声1: 囀る声。駆け回る音。肌。肌が剥がれ落ちてるんだと思う。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: すごく腹が減った。すごく喉が渇いた。剥がれてる。

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: ひょっとしたら… そんな事して大丈夫かな? もし俺がそうしても…?

降りても降りても終わりが無い駐車場の中、
話し相手は壊れたラジオのようなSCP-3074-Cだけ。

そんな状況が男性の精神をむしばんでいき、そして…

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: あり-ありがとう。オーケイ。ありがとう、ありがとうありがとうありがとう。愛してる。ありがとう。

[何かを裂く湿った音。]

声1: ありがとう…

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

[記録終了]

声1: [静かな囀り]

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: [静かな囀り]

声2: 区画、ゾーン、数字または文字。

声1: [静かな囀り]

[機械的なハム音。]

声2: イゾトヴァ・パーキング・センターをご利用いただき誠にありがとうございます。良い一日をお過ごしくださいませ。

SCP-3074に対する考察

本報告書は上記の記録をもって終了しています。

この男性はどうなったのか?
SCP-3074-Cは何者なのか?
そもそもカセットテープが誰がどういう経緯で
記録したものなのかなど肝心なところは最後まで謎のままでした。

そして、これらの謎…
というよりも著者の狙いが何だったかを考えるとき
最大の手がかりとなりうるのが、
本家ディスカッションで著者自身がインスパイアされたことを公言している
変身(フランツ・カフカの小説)、Papers, Please(インディーゲーム)、阿彌殻断層の怪(伊藤淳二のホラー漫画、)の3つの異なるメディアの作品です。

まず、変身については
世界的に有名なカフカの不条理小説であり、
そのあらすじも「目が覚めるとなぜか毒虫に変身していた男が
家族に邪険に扱われた挙句死亡する」という
これまた説明不要なくらい有名なものです。

先に名前を挙げた作品群の中でも、
唯一メタタイトルにその作者名が冠されているこの変身ですが、
突如不条理な状況に投げ込まれ、
最後には衰弱して死亡するという点については
本報告書のストーリーと確かに共通する点がありますね。

次にPapers, Pleaseは架空の共産主義国家における
入国審査官を主人公としたインディーズゲーム
…だそうです。(私は初めて知りましたが、かなり評価の高いゲームみたいですね。)

旧共産圏であるウクライナが舞台となっている事や
いかにも共産主義的な、
サービス精神の欠片もないSCP-3074-Cの対応などは
このゲームからの影響でしょう。

最後に阿彌殻断層の怪は
日本人ホラー漫画家伊藤淳二氏の漫画作品です。

漫画のあらすじは地震で出現した人型の穴に
次々と人々が入っていき2度と帰ってこないという
不条理ホラーものであり、これは
本作においてカセットテープの男性が
それが死に近づいていくことを薄々感じながらも
SCP-3074の下へ下へと降りていく様子に重なります。

この作品で描かれている「穴に入りたい」という衝動は
心理学用語で言うデストルドー(死へ向かう衝動)
のメタファーと捉えることもでき、
ともすれば本報告書もまた
こうした心理の描写をひとつのテーマとしていた可能性があります。

これらのことを踏まえて私は、
著者がこの報告書で私たちの理性の根幹にある
"常識"が通じない不条理の世界の恐怖を
描こうとしたのではないかと結論付けました。

一方で謎解きのようなことは本題ではないので
男性の末路やSCP-3074-Cの正体などと言ったことについては
最後まではっきりと明かさず、
読み手の創造に委ねる形を取ったのではないでしょうか。

…と、こんな感じで
少々力技で結論を述べてしまいましたが
最後にもう一点だけ、個人的に気になるのが
もしカセットテープの男性がSCP-3074-Cに対して
『〇〇区!ゾーン××! 12-3456!』のような感じで
必要な情報だけを正確に答えることができていたら
SCP-3074-Cは一体どんな反応を返したいたのだろうかという点です。

もしかしたらその場合は
案外すんなり地上に返してくれていたのかも…しれないですね。

SCP-6096 『御客様』

SCP-6096を撮影した写真
▲サイト-19に収容されているSCP-6096。

確認された全ての事例で、
この標的は地球人口から無作為に選択された 1 名の人間です。

SCP-6096 - SCP財団

オブジェクトクラス : Keter

隕石が頭に直撃すれば
それがよほど小さなものでない限り即死は免れませんが
だからといって隕石の衝突をまじめに怖がる人が(滅多に)いないのは
それが我が身に降りかかる確率があまりにも小さいからです。

とはいえ…
自分が被害に遭う確率が低いからといって
あなたはこのアノマリーに対しても
同じように恐怖を感じずにいられるでしょうか…?

SCP-6096の概要

上記の写真を見てのとおり、
SCP-6096はまるでシーツをかぶった小柄な人間のような見た目のアノマリーであり、
一見すると大して危なそうな印象は受けません。

しかしそのオブジェクトクラスは最もリスクの高いKeter。

なぜ、こんな弱そうなアノマリーがKeterなのか?
その理由は、要約すれば主に次の二点に集約されます。

まず第一の理由は、このアノマリーに
実際に人を襲う習性があることです。

これについては後述する活動事例が詳しいので、
後ほどじっくり見ていくことにしましょう。

次に第二の理由は
そのような習性があるにもかかわらず
このアノマリーの行動を食い止めることも、
殺害することも一切不可能であることです。

これは、例えばSCP-6096の力がすごく強いだとか
銃弾も爆弾も聞かないくらい体が丈夫だとか
そういった物理的な事情ではなく、
このアノマリーが持つ特有の強制力に由来するものです。

より具体的に言えば、
SCP-6096を認識した時点で
SCP-6096の行動を止めたり、
SCP-6096に危害を加えたり、
もしくはSCP-6096のシーツをはがして
中身を確認するような行動すべてが出来なくなってしまうのです。

つまり、例えば誰かがSCP-6096を殺そうとして
その頭に拳銃を突きつけることはできても
引き金を引くことまでは絶対にできませんし、
もしくは第三者に命じてSCP-6096を攻撃させたり
SCP-6096が進む先に罠を仕掛けるといった行為も行う事が出来ません。

頭の中でそうした行動をしようと考えても体が言う事を聞かず、
それどころかSCP-6096の目的を手助けするように行動を支配されてしまうというのが、
このアノマリーの一番の恐ろしさであり
財団がKeter指定をした最大の理由なのです。

さて、ではそんな厄介極まるSCP-6096が
一体どのようにして人間に危害を加えるのか、
それを報告書中の活動事例から確認していきましょう。

SCP-6096の活動事例

周期的に訪れる活動期に入ったSCP-6096は
地球上の特定の誰か一人を無作為にターゲットに定め、
その時点でターゲットが今どこにいるのかを未知の方法で察知します。

その後、ターゲットのもとへの移動を開始するのですが、
SCP-6096の移動速度は人間のそれと変わらず、
現実改変能力者のようなテレポート能力も
シャイガイのような高速移動能力も持たないため、
その移動は主に先述した強制力を背景とした、
公共交通機関の利用によって行われます。

要は、タクシーの運転手だろうが電車の駅員だろうが
SCP-6096を見てしまった時点で協力を強制されるので
どんな交通機関もSCP-6096にとってはフリーパスに等しいというわけですね。

さて、SCP-6096の移動手段についの説明はこれくらいにして
そろそろ本題へと入りましょう。

以下に記載するのは、かつてSCP-6096のターゲットととなってしまった
ニューメキシコ州に住む16歳のデズモンド・マリオンという少年と
その両親であるサミュエルとアマンダ夫妻が自宅で
SCP-6096に遭遇した時の映像記録を文章化したものです。

<記録開始>

(マリオン家の人々が居間でカウチに座り、テレビに向き合っている。サミュエルとアマンダ・マリオンは熱心にテレビを見ているが、デズモンド・マリオンは携帯電話を操作している。車が止まる音が聞こえる — これは地元のタクシー運転手、ドレイク・エレンがSCP-6096を家の前で降ろした際の音だと思われる。数秒後、サミュエル・マリオンは妻を肘でつつき、監視カメラに映っていない窓を指差す。)

アマンダ: 何よ?

サミュエル: あれを見たか?

アマンダ: あれって? 何も… あら! (笑う)

サミュエル: (笑う) 分かっただろ?

アマンダ: ハロウィンのつもりかしらね? もうクリスマス間際だっていうのに?

(沈黙。)

アマンダ: 近付いて来るわ。あの… あ、あいつ… あいつは… ああ… ああ…

(アマンダは手を伸ばし、デズモンドの腕をきつく掴む。彼は携帯電話から顔を上げる。)

デズモンド: ん? どうしたの? 俺忙しいんだけど。

アマンダ: 何でもないの、ハニー、ただ — ああ — ここに居てちょうだい、いい? ただ私と一緒に居て。ああ、まさかそんな…

(SCP-6096が玄関ドアを静かにノックする音がかすかに聞こえる。)

サミュエル: (取り乱した声で) 俺が出る。

(サミュエルは震えながらカウチから立ち上がり、玄関ドアへ移動する。彼はドアを開け、SCP-6096が入って来る。)

デズモンド: (笑う) はぁ? もしかしてキミー1か? なんでそんなカッコしてんの? (腕を引こうとする) ねぇ、離してくんない? ちょ — ちょっと痛いよ。

(アマンダが囁く。)

アマンダ: 大丈夫よ、ハニー、ごめんなさい、ハニー — ただ、う- 動かないでいれば大丈夫。腕を引こうとしなければ痛くしないわ、ただの —

(SCP-6096が接近すると、サミュエルが前に出てデズモンドの反対側の腕を掴み、彼をカウチに抑えつける。)

アマンダ: — 大丈夫だから、じっとしていて、ハニー、目を閉じればいいの、目を閉じれば痛くないんだから。愛してる、あなたを愛してるわ、分かった? ハニー?! 分かった?!

(デズモンドは自由になろうと試みるが、不可能である。彼は両足を激しく宙に蹴り上げる。携帯電話がカウチの肘掛けから滑り落ち、カーペットの上に落ちる。)

デズモンド: 何言ってんだ — 俺はマジだぞ、離せよ!

サミュエル: (泣きながら) 動くな、息子よ、動くんじゃない。きっと — きっとそう長く苦しまなくて済む。頑張ってくれ。俺のために頑張ってくれ。

デズモンド: 腕が折れちまうよ!

(SCP-6096がデズモンドに到達し、足から順に、彼を綿シーツで包み始める。アマンダとサミュエルが口を開けたままそれを見つめている間に、デズモンドは完全にシーツの下に引きずり込まれ、目に見えてもがいている。マリオン夫妻は悲鳴を上げようと試みているようだが、不可能である。)

(デズモンドが大声で叫び始め、荒々しく殴打するような動きがシーツの下に見える。)

(36分間これが続く。)

(デズモンドが完全に消失すると、SCP-6096は従順な状態に戻る。SCP-6096は綿シーツで自らの身体をくるみ、カーペットの上に座り込んでテレビに向き合う。)

(サミュエルは見たところショック状態で床に崩れ落ち、胎児のような姿勢で体を丸める。アマンダはSCP-6096を見つめたまま、後ろによろめいて奥の壁に寄りかかり、携帯電話で救急隊に通報する。)

(警察が到着するまで、サミュエルが時折身体を揺するのを除けば、誰もその場を動かない。)

<記録終了>

記録は以上です。

ターゲットにたどり着いたSCP-6096が
人間一人を、それもおそらく相当の苦痛を与えながら
シーツの中に飲み込んでまるで捕食するように消し去ってしまう様子が克明に記録されていますね。

しかしそれにもまして痛ましいのは、
SCP-6096に協力を強制された両親の様子です。

行動こそSCP-6096に協力的なものの、
その口ぶりや涙を流す様子からは、
化け物に息子を捧げる事を強制されていることによる
苦悩のようなものが伝わってきます。

報告書の記載によれば、
この夫妻にはその後財団によって
記憶処理が施されたらしいのが数少ない救いでしょうか…

化け物の凶行に否応なく加担させられる絶望

このように明確に人類に害を及ぼしているSCP-6096ですが、
今のところ財団はこのアノマリーに対して
何ら有効な手立てを見つけられていません。

報告書末尾に添付されている収容主任のメモには
もはや諦めの境地に近い感情が吐露されています。

財団がこの化け物を収容できているなんて、どの面下げて言えるのかと不思議に思っているだろうな。
奴は好きに出入りできるし、仮にもう収容室に帰りたくないと決心したなら、無理やり連れ戻す手段は文字通り全く無い。
そして、そうとも、あの部屋をホテルの客室じゃなくて収容室と呼んでるのも同じくらい恥ずべき事だと思ってるはずだ。

メモの中にはSCP-6096を倒す可能性として
以下のシナリオが挙げられていますが、
それすらも書いた本人自身があり得ないファンタジーだと言い捨てている始末。

  • 偶然、GOCなどが財団を攻撃してSCP-6096がその巻き添えになる。
  • .aic(財団の人工知能)が対処する。
  • SCP-6096の標的になった人物がSCP-6096を返り討ちにする

財団ですらどうすることもできない
SCP-6096の標的に、もしあなたや
あなたの身近な人が選ばれてしまったら…

家族や友人に組み伏せられながら
SCP-6096に呑み込まれるのを待つか、
あるいは自分がSCP-6096に家族や友人を呑み込ませる手伝いをするのか。

どちらにせよ、待っているのは
悪夢のような結末だけでしょう…

SCP-3733 『誰も彼も』

一体どうしてしまったんだ?
まるで壊れたレコードだ。
君たちは全員壊れたレコードのようだ!

─SCP-3733-1

SCP-3733 - SCP財団

オブジェクトクラス : Pathogen

私たちが『人間性』や『人間らしさ』といった言葉を使うとき、
そこに含まれる『人間』とは一体何を指しているのでしょうか。

優しさや思いやりのことでしょうか?
それとも何かを考えたり、想像したり、伝えたりする
能力のことを意味しているのでしょうか?

この報告書を読むと、
そんな取り止めのないことを考えてしまいたくなるのです。

SCP-3733の概要

SCP-3733報告書を開くと
最初に目に飛び込んでくるのが次の物騒な一文です。

記録・情報保安管理局からの警告

あなたはSCP-3733のメインファイルのアーカイブ済みリビジョンを閲覧しています。このリビジョンはSCP-████の収容違反中に作成されました。下記の文書からは認識災害の影響は検出されていません。しかしながら職員は閲覧の続行前に、検証済み認識災害耐性スコアにおいて2.0を記録していなければなりません。

何らかのアノマリーが収容違反を起こしたことで
認識災害が発生したようですが、
それがSCP-3733にどう関係があるというのでしょうか。

ともあれ、この文言について今の時点で
これ以上考えても無駄なようですので一旦スルーします。

次に、報告書に記されている
SCP-3733の収容プロトコルと説明を見ていくと
主に次のようなことが分かります。

[収容プロトコル]

  • SCP-3733-1は浴室を備えた部屋に収容するよ。
  • SCP-3733-1には食料や飲料、清掃用品などが自動支給されるよ。
  • SCP-3733-1との接触は最小限にとどめてね。
  • SCP-3733に暴露した全ての対象がこの方法で収容されるよ。

[説明]

  • SCP-3733は自己拡散能力のある情報災害だよ。
  • SCP-3733に曝露すると、脳の通常使われてない部位が活性化するよ。
  • ↑の結果、曝露者は"経験及び人格の範囲外で活動及び論理的思考を行う能力"を得るよ。
  • SCP-3733がどうやって転移するかは不明だよ。
  • かつて数百万人の財団職員と一般市民がSCP-3733に曝露していたよ。
  • でもある時点でSCP-3733が収容され、今では元財団職員のモンティ・チャップマン博士だけが唯一の曝露者だよ。
  • モンティ・チャップマン博士は3733-1に指定されて収容下にあるよ。

これは箇条書きの要約ですが、
パッと見ただけでも所々に
違和感を感じられたのではないかと思います。

例えば"経験及び人格の範囲外で活動及び論理的思考を行う能力を付与"(原文ママ)
という言い回は意味がよく分かりませんし、
SCP-3733が収容されたことが記されているにもかかわらず
その過程については一切触れられていないのも不自然です。

何だか、だんだんきな臭くなってきましたね…

インタビューログ

続いては報告書中に記載されている
SCP-3733-1ことチャップマン博士へのインタビューログを見ていきましょう。

<ログ開始>

カルビン研究員: おはようございます、チャップマン博士。

SCP-3733-1: おはよう、カルビン。

カルビン研究員: あなたは隔離されています。しばらく外に出ることは出来ません。

インタビュアーはカルビン研究員。
ここまでは別に普通の会話ですね。

SCP-3733-1: よしてくれ、カルビン。
君は私を、ミーム部門のチャップマン博士を知っているだろう?
一緒に楽しい時間を過ごしたじゃないか。

カルビン研究員: "楽しい時間"について詳しくお話していただけますか?

SCP-3733-1: 100周年記念パーティーを覚えているだろう?
私たちはゴーストペッパーをこっそり乾燥唐辛子の中に混ぜたじゃないか?
クソッ、あれは楽しい時間だった。
クレフ博士の目が飛び出したのをこの目で確かに見たんだ。

カルビン研究員: あなたは隔離されています。
しばらく外に出ることは出来ません。

SCP-3733-1: 聞いているか、カルビン?
君はまだ覚えているか?

カルビン研究員: "覚えている"ということについて詳しくお話していただけますか?

…何だかいきなり雲行きがおかしくなってきました。

明らかに両者の会話が噛み合っていません。

SCP-3733-1: 一体どうしてしまったんだ?
まるで壊れたレコードだ。君たちは全員壊れたレコードのようだ!

カルビン研究員: "君たち全員"について詳しくお話していただけますか?

SCP-3733-1: なんてこった。ここは地獄なんだろう?
自分の言っていることが分かるか?まったくもってどうかしているぞ!
君はただ歩き回るだけだ、そう、ロボットのように!
いや、実のところロボットは考えることが出来る、そうだろう?
君は少しくらいものを考えているのか?

カルビン研究員: このインタビュー中はご協力をお願いします。

キレるチャップマン博士。

しかし、客観的に見て彼の言い分はもっともであり、
むしろ財団側のカルビン研究員の方が
会話のキャッチボールを拒絶しているように見えてしまいます。

これは一体…?

SCP-3733-1: 君たちはそんな風にしていくんだろう?
今や私たちみんながそうだ。爆発音ではなく、すすり泣く声で。

カルビン研究員: "すすり泣く声"について詳しくお話していただけますか?

SCP-3733-1: なんてこった。あれほど色々なことが起こったと後に君たちはただ死んでいこうとしていると言うのか?ビートルズの後で?技術的特異点の後で?クソッタレな革命の後で?こんなことになると?

カルビン研究員: あなたは隔離されています。しばらく外に出ることは出来ません。

SCP-3733-1: ああ、頼む、カルビン。この部屋は防音加工がされていないんだよ。君が話しているのが聞こえるんだ。君は言うことがなくなるまで何度も何度も何度も自分の言葉を繰り返しているし、それからすることだって似たようなものだ。まるでオウムのいるサーカスみたいだ。実際にはオウムには言いたいことがあるということを除いては、だが。頼む、何とか言ってくれ。

カルビン研究員: "オウム"について詳しくお話していただけますか?

SCP-3733-1: 他のことを頼む。何でもいいんだ。

カルビン研究員: あなたは隔離されています。しばらく外に出ることは出来ません。

SCP-3733-1: 私は世界で最後の正気の男だ!誰も彼もがどうにかなってしまった!

カルビン研究員: "誰も彼も"について詳しくお話していただけますか?

SCP-3733-1: 誰も彼もがどうにかなってしまった。頼む、どこかへ行ってくれ。どこかへ行ってくれさえすればいい。それ以外は何も望まない。

<ログ終了>

ネタばらし

さて、上記のログを読んでおそらくほぼ全ての人は
まともなのはチャップマン博士の方であり、
むしろカルビン研究員の方が曝露者なのではないかと
お疑いになったのではないかと思いますが、実際にその通りです。

実を言えばこの報告書中で描かれていたのは、
冒頭のメッセージに出てきたアノマリーの影響によって
地球上のほとんどの人間の脳から
知性、想像力、好奇心、芸術などの
「人間を人間たらしめる能力」が失われた世界のお話だったのです。

そして、数少ない
曝露を免れた一人であるチャップマン博士は
周囲が曝露者だらけの世界の中で逆に異常者として扱われ、
アノマリーとして収容されてしまったというわけですね。

誰にも言葉が通じないという恐ろしさ

以上がSCP-3733の全容です。

所謂信頼できない語り手のトリックを活かした、
パンチの効いた報告書でした。

自分以外全員異常な世界で
見た目は何も変わらないのに
話が一切通じないというシチュエーションの恐怖感も絶妙で、
たった一人残されたチャップマン博士の絶望を思うと
かなりゾクゾクするものがありました。

個人的に、こういう話に出会えた時こそが
SCP財団を知れてよかったと思える瞬間の一つです。

SCP-4012 『幾千幾万もの星々にどうやって踊らないかを教えるよりも』

罪悪感、羞恥心に押しつぶされそうだ。
目も当てられない、俺は決して罪を償えない。
お前は死んですらいない。絶対に償えない。
俺は自分の罪に、永遠に充てがわれる。
俺は汚れてる汚れてる、汚れちまってるんだ、D-112。

SCP-4012 - SCP財団

オブジェクトクラス : Pathogen

私たちはしばしば自分の好きな映画や音楽について
人と語り合うことを好みますが、
中にはそれに強い衝撃を受けたことはわかっているのに、
具体的にどういった理由からそう感じたのかを
うまく言葉で説明することができないタイプの作品
というものが存在します。

私にとってこのSCP-4012報告書は
まさにそういうタイプの報告書でした。

SCP-4012の概要

まずは例によってSCP-4012の
アノマリーとしての概要をおさらいしていきましょう。

SCP-4012はアメリカのアメリカのメイン州キャンデムの森林郊外に位置する、
周囲27kmを巨大な金属製ゲート(SCP-4012-1)で囲まれた異次元空間です。

SCP-4012の内部には広大な空間が広がっており、
その空間は地球と似てはいますが歴史的進行、支配種に関して大きな差異があり、
特に支配種についてはSCP-4012-2に分類されています。

SCP-4012-1を越えてSCP-4012内部に入ることは
それほど難しいことではありませんが、
135mほど進むと地形的要因によって引き返すことが困難となります。

次にSCP-4012の危険性についてですが、
オブジェクトクラスがKeterでないことから察せられるように、
少なくともSCP-4012-2の側から
規定世界へ向けて何らかの敵対的干渉が行われた例はありません。

ですが、SCP-4012にはそれを観測したものに対する
致命的なミーム的影響があるため、
財団は本アノマリーを米軍の軍事施設に偽装して
外部の人間が立ち入れないようにした上で
職員についてもDクラス以外の内部への立ち入りを禁止し、
さらにSCP-4012内探査の映像記録や
無編集の転写物への全てのアクセスを
ミーム無効化映像により保護するという厳重な対応をとっています。

またSCP-4012内部では
ストリーミングビデオやラジオは機能しますが
GPSは内部に入った時点で無効化されてしまうため、
外部から中の人間の正確な位置を特定することはできません。

…と、この辺りが概ね
本アノマリーの概要説明となりますが、
ここまでの内容は比較的オーソドックスな
「異次元空間もの」のテンプレであり、
冒頭で私が煽ったような独創性は
「まだ」感じられないかもしれません。

…しかし、問題はこれに続く
SCP-4012の探査記録の内容にあるのです。

SCP-4012の探査記録について

さて、いよいよ本報告書の真髄たる
探査記録に触れていきますが、
これに関しては原文をそのまま読むことをお勧めしたいので
あえて引用は行わないこととします。

ですので、ここからは報告書中の探査記録を
読了されている前提で話を進めていきます。

…というわけで
探査記録を読まれたことと思いますが
正直どう感じられたでしょうか?

きっとあれを読んだ多くの人が混乱し、
「意味はわからないが何かとんでもないものを見てしまった」
という感覚に襲われたのではないかと思います。

少なくとも私はそう感じました。

もちろん、理屈抜きに
そういった衝撃を与えられるだけでも
創作の持つパワーとして素晴らしいことではあるのですが、
せっかくですので本日はもう少し踏み込んで、
ディスカッションや著者発言の内容を踏まえつつ
その考察を試みてみたいと思います。

で、SCP-4012って結局なんだったの?

考察…というよりほとんど答えそのものなのですが、
実はredditにこの報告書の著者である
LordStonefish氏のAMA(Ask Me Anything)ページがあり、
そこで「ズバリSCP-4012って何だったったの?」
という読者からの質問に対して、
次のような回答を行なっています。

[意訳]
WolvesSaidGayPride(質問者)
SCP-4012で何が起こっているのですか?

RealLordStonefish(回答者)
SCP-4012は、地球と同じくらい古く、規定現実とは別の場所、おそらく「創造主」の間に存在する中継地点として機能する超次元空間です。2001年宇宙の旅(※映画)のスターゲート・シークエンスの最後に出てきたホテルの一室と同じように、地球外生命体が庭/チェックポイント・センターを越えた先にある空間を使って、彼らが文化的に快適だと感じるような方法で、魂を無限に転送しているのです。

より根本的なことを言えばSCP-4012とは、あなたがいつも通りの日常を過ごすことや、夜に星空を見上げたりするようなことです。本当にそれを理解したいのなら、次の晴れた日の夜に外に出てみてください。
ヘッドホンを耳に装着し、携帯電話でこの音楽この音楽を流して、まっすぐ上を見つめてください。

それは即興のコズミック・ホラーです。

[原文]

WolvesSaidGayPride

What's going on in SCP-4012?

RealLordStonefish

At a base, in-universe level, SCP-4012 is an extradimensional space that acts as a waystation, a halfway point that is as old as the planet and exists between consensus reality and somewhere else, possibly The Creator. In the same manner as the Hotel Room at the end of the Stargate scene in 2001, an alien intelligence uses the space beyond the garden/checkpoint center to transfer souls to the infinite in a matter their culture would find comfortable.

On a more subtextual note, SCP-4012 is about going along your normal day, and then stopping at night to stare up the stars. In fact, if you really want to understand it, go outside on the nearest clear night. Put your headphones in your ears, and on your phone, play this music or this music, and stare straight up.

[意訳]
OceanMcMan(質問者)
あなたは自身の著者ページ「SCP-4012が自分の最高傑作だと思う」と書かれていますが
この作品のどういった部分があなたにとっての最高傑作なのでしょうか?

RealLordStonefish(回答者)

多少未熟ではあったかもしれませんが、
SCP-4012で語ろうとしているストーリーは私にとって大切なものをたくさん含んでいます。
私の人生哲学も入っていますし、私が深く重要だと思う多くの芸術作品への言及も入っています。
アート、詩、心理学理論、宗教観、音楽、映像などを一つのマルチメディアな物語の中で一度に使用することによって、私が伝えたいと思っていたことを伝えようとしたのです。
読者は必ずしも同意してくれませんでしたが、SCP-4012は私が書いたものの中で
再読したときに納得のいく数少ない作品の一つなのです。

[原文]
OceanMcMan
You say on your author page that you believe SCP-4012 is your greatest work. What in particular makes this your best article of yours', to you?

RealLordStonefish
Even if I slightly botched the execution, the story I'm trying to tell in SCP-4012 combines a lot of important things to me. My philosophy of life is in there, and so are references to a number of works of art that I find deeply important. I tried to use art, poetry, psychological theory, religious vision, music, and video together in one multimedia story to try to convey what I was trying to tell about it. While readers didn't necessarily agree, SCP-4012 is one of the few things I've written that bowls me over upon re-reading.

[出典]

IAmA LordStonefish, with one of the most declassification-worthy bibliographies on the SCP Wiki. I'm here today to declassify my own work upon request. AMA about what you want to know, don't get, or need explained! from SCPDeclassified

これらの発言を踏まえた上で私が考えたSCP-4012の正体は
「地球外生命体が地球の生物の観察、採集用に設置した転送装置」です。

このように考えた最大の決め手は、
上記AMA内で言及されているキューブリックの映画
『2001年宇宙の旅』に出てくるホテルの一室(White Room)が
まさにそのような設定(キューブリック曰く「人間動物園」)の場所だったことです。

2001年宇宙の旅の『White Room』

キューブリック監督が『2001年宇宙の旅』の不可解なラストシーンについて語る映像が公開される - ナゾロジー
キューブリック監督が『2001年宇宙の旅』の不可解なラストシーンについて語る映像が公開される

そして…報告書中のそれ以外のいくつかの要素、
例えばD-112がSCP-4012内部で体験した一連の出来事などは
LordStonefish氏が同じくAMAで述べていた氏の"人生観"を反映した、
"平凡な現代人の一生に対する痛烈な皮肉"だったのではないかと考えます。

氏の作成した報告書にはしばしば
今述べたような皮肉と思しき表現が登場し、
例えばSCP-2432には次のような一節があります。

大抵の人は情熱を注いでいる仕事のためなら死ぬことも厭わないでしょう。あなたは本当にそうすべきなのですが、できない。感嘆は日常になり、日常は退屈になり、それが日ごと繰り返されて、あなたは自分の魂を維持するべく奮闘します。これは起こるべきことではありません。

“べき”はこのように恐るべき言葉です。思考の罠。“べき”。あなたの人生は“べき”に支配されています。

あなたは出世競争で張り合うべきなのですが、心底疲れ果てています。あなたは化学療法を受けている祖母にメールを送ると約束しますが、彼女は年を取っていて文字の配置をするだけでも骨が折れるのでメールを理解するのもやっとで、それが彼女にとっては大いに苦痛です。あなたはそこにいるべきなのですが、仕事は非常に厳しいものです。

何とも皮相なものの見方ではありますが、
しかしその一方で読んでいて思わず
ドキッとさせられるような説得力も感じられます。

そしてこれらの思想的要素に加えて
氏の報告書のバックボーンとなっているものが
本家ディスカッション内で影響を公言している
デイヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリックらの映画や
eeカミングスの詩からの影響です。

これらの作品、特に映画を見たことのある方は
本報告書を読んで、劇中のいくつかの場面が
思い起こされたしたかもしれませんね。

このように、SCP財団、氏の人生観、
映画や詩の影響など複数の異なるエッセンスが
ごった煮のようにぶち込まれた結果の産物がSCP-4012なのであり、
だからこそ本報告書は一見して「難解な」ものとなっているのでしょう。

もっとも、それだけバラバラの要素を詰め込めば
テーマが定まらずに内容がぼやけざるを得ないところ、
きっちりと一本のSCP報告書としてまとめ上げている点が
この著者の凄まじいところなのですが…。

終わりに

以上、異次元の恐怖が味わえるSCP報告書4選でした。

どれも全く異なるタイプの恐怖を描いた4作品でしたが
貴方の心に爪痕を残した作品はありましたでしょうか。

当ブログでは今後も引き続き
魅力的なSCP報告書のリサーチを進めていきたいと思います。

それでは~。

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