スティールボールランはなぜアニメ化を熱望されるのか

リンゴォ・ロードアゲインジョジョの奇妙な冒険

現在ネットフリックスで
第六部の第二シーズンの公開が予定されているジョジョのアニメ版だが、
その次作である第七部、スティールボールラン(以下SBR)についても
国内外問わずアニメ化を望む声は少なくない。

ジョジョ7部、『SBR』はアニメ化するでしょうか? - Yahoo!知恵袋

ジョジョ7部「スティール・ボール・ラン」のアニメ化はいつ? | 漫画まとめた速報

Is JoJo's Bizarre Adventures Part 7 'Steel Ball Run' Anime Confirmed?

描画コストの大きい馬の描画が避けて通れないことから
アニメ化は不可能であるとか、
いやいやCGを使えば問題ないとかいろいろ議論がなされているが、
それとは別に私が個人的に気になったのは
「7部って何がそんなに面白かったんだっけ?」ということだ。

こういうと勘違いされそうだが
私は別に7部を貶したいわけではない。

むしろシリーズとしてはかなり好きな方なのだが、
一方で思い返してみると序盤の展開やバトルの描写などには不満があったり、
でも作品として総合的に考えるとやっぱり名作な気もしてきたりで
何とも割り切れないカオスな感情を抱いているというのが正直なところだ。

そこで本日は、その気持ちにケリをつけるために
SBRの面白いと感じた点とつまらないと感じた点を
正直に全部項目ごとに描き出して吐き出してみようと思う。

ちなみに未読の方に配慮して
ネタバレは極力しないよう気を付けてはいるが
皆無では無いので閲覧はあくまでも自己責任でお願いしたい。

それでは、いってみよう。

SBRのここが面白かった!

アメリカ大陸横断馬レースという壮大な設定

steelballrun1巻より

スティール・ボール・ランの時代設定は
車も飛行機もまだ一般化されていない19世紀終盤。

馬という、古代から人類と共にある原始的な移動手段で
二人の男がアメリカ全土を旅するというロマン溢れる設定は
ただそれだけでもワクワクしてしまう壮大さがある。

加えて承太郎のモデルがクリント・イーストウッドだったり1
デビュー作とデビュー二作目がどちらも西部劇もの2だったりと
西部劇には思い入れが深い荒木先生だからこそ
その描写の端々には非常な熱がこもっている。

日本の武士道にも似た
古き良き時代のダンディズムを貫くキャラクターたち、
容赦ない大自然の過酷さとそれに挑む人間の逞しさ、
近世から現代へ、急速に時代が移りかわるなかで生まれる
古い価値観と新しい価値観の間での葛藤など
この設定でなければ描けない魅力がたっぷり詰まっていることが
SBRを愛する多くの熱心なファンを獲得した最大の理由だと私は思う。

わかりやすくシンプルな目標

SBRのストーリーについて、
もう一つよかったのが目標のシンプルさだ。

最初に大陸横断レースに優勝することという大きな目標が与えられ、
その目標は基本的に最後まで変わることがない。

途中でスタンドバトルとか、大統領の陰謀とか
聖人の遺体とかの要素が絡んではくるが
読者はレースの終わりが物語の終わりだということがわかっているので
安心してストーリーを追うことができる。

これは、続編の八部ジョジョリオンで
主人公の目標がふわふわ定まらず
行き当たりばったり感が酷かったのとは対照的だ。

主役二人のキャラクターが最高!

第7部が画期的だったのは舞台設定だけでなく
ジョジョ初の"W主人公もの"だったこともそうだ。

主人公の一人、ジャイロ・ツェペリは
ネアポリス王国(現イタリア)出身で、一見軟派でチャラい雰囲気だが
芯には仕事人らしい冷徹さと青臭い正義感を兼ね備えた熱い人物。

もう一人の主人公、ジョニィ・ジョースターは
アメリカ出身の元天才ジョッキーで、
ある事件を機に栄光からどん底に転落し、
「マイナスからゼロに戻る」ためにレースの出場を決意した経緯を持つ。

SBRではそんな出自も性格も目的も異なる二人が
バディとして共にレースに挑む姿が描かれ、
それがまた作品に深みを与えている。

ジャイロの方が年上で人生経験も豊富ということもあり
基本的にはジャイロがジョニィを導く立場にあるが、
レースを通じて逆にジャイロが
ジョニィから大切なことを学ばされることも多い。

steel ball run 7巻より

利益のための打算からくる共闘やベタベタとした馴れ合いではなく
時には励まし、時には叱咤激励し、
お互いに欠けているものを補いあうような理想の"友人"関係が描かれているのだ。

雪の中の乾杯

ジャイロとジョニィの関係とはまさにそのようなところであり、
そんな彼らを見て「自分もこんな友人が欲しい」と思った読者は少なくないだろう。

敵側にも魅力あふれる奴らがたっぷり

しばしば敵のキャラの濃さが語種になるジョジョだが、
SBRにも胸焼けしそうなくらい濃ゆい敵がワンサカ登場する。

個人的には全員紹介したいくらいだが
それだと流石にキリがないので
特に重要と思われるキャラクターを一人ご紹介しよう。

SBRの中でも中盤に差し掛かるあたりで登場し、
1ストーリー限りのゲストキャラでありながら
作品全体の方向性にすら多大な影響を及ぼした
リンゴォ・ロードアゲインだ。

リンゴォ・ロードアゲイン

リンゴォは物語中の最大の敵である"大統領"の刺客の一人で、
公正なる「果たし合い」は自分自身を人間的に成長させてくれる
という思想を持っている。

これは当然ながら、
生命を何よりも上位に置く現代の文明社会の価値観とは相容れない思想であり、
ジャイロたちも最初の内は読者の気持ちを代弁するかの如くリンゴォのことを狂人扱いするのだが、
戦いが進み、リンゴォの過去が明かされ、信念の強さが語られるにつれて
そんなリンゴォが格好良く見えてくるのだから不思議だ。

リンゴォがそのような思想を持つに至った理由や
戦いの結末についてはここでは述べないが、
リンゴォの語った『男の価値』は結果的にジャイロたちに大きな影響を残し、
SBRという作品そのもののその後の作風をも決定づけたように思う。

SBRにはそのような信念ある敵が多数登場し、
各々の美学に従って散っていく。

これはもはや能力vs能力の戦いの範疇に収まるものではなく
思想vs思想の戦いでもあり、
だからこそ読者の胸にも強く訴えかけるものがあるのだと思う。

画力が第二の全盛期と言ってもいいレベル

ジョジョといえば時代に伴う
画風の変化も話題になりやすい漫画だが、
6部〜SBRの間においても大きな画風の変化が起こっている。

特に顕著なのが先述したリンゴォ戦の以前と
以後の絵柄の変化ではないだろうか。

ジョニィの顔の変化

ジョニィの顔の変化(左が3巻、右が11巻よりの抜粋)

瞳の描き方から影の付け方、構図まで
全体的に大幅なブラッシュアップが図られ、
それまでの六部時代の影響が色濃く残るスタイルを完全に脱却している。

おそらく、リンゴォ戦の少し前の時期に掲載誌がWJからUJに移行し、
より大人向けの物語を展開することが可能になったことで、
絵柄もそれに合わせた写実的で落ち着いたものを目指したのではないかと思うが、
実際この絵柄はSBRのドライでハードボイルドな雰囲気によくマッチしている。

構図にも神がかり的に冴えたものが多数見られ、
漫画の枠を超えた芸術性すら感じられるほどだった。

物語ラストの盛り上がりが半端ない!

ファッションで足元の装いが重要なように、
漫画もまたその"終わり方"が肝心だ。

どんなに優れた作品も、その結末が微妙であれば
作品全体の評価を台無しにしてしまいかねない

その点、SBRにおける終盤の展開は素晴らしかった。

いかにして読者の心を揺さぶるか?
敵の恐ろしさをどう表現するか?
作品の中に物語のテーマをどう織り込むか?

こうした点でSBRは
当初の期待を超えるものを見せてくれたし、
だからこそ本作は少なくないファンから
高い評価を得られているのではないかと思う。

SBRのここがつまらなかった…

スティール氏の駄洒落

序盤のダルさ

ここまで概ねSBRを褒めちぎってきたが、
個人的にこれはちょっと…
と思ってしまった部分がなかったわけではない。

特にきつかったのが、
リンゴォ戦あたりまでの展開のダルさだった。

スタンドではなく鉄球や乗馬術などの技術による戦いは
新鮮で面白かったが2巻くらいで早々スタンドが出てきて
結局スタンドバトル漫画に戻ってしまったし、
その上出てくる敵もオエコモバやブンブーン一家やポークパイハット小僧など
ケレン味だけはあるが、人物的にはあまり深みの感じられないキャラばかり。

スタンドバトルの勝敗の納得感の薄さなど、
全体的に六部で批判されていた部分がまだまだ抜け切れてない印象で、
序盤は正直読んでいて今後の連載が心配になることがしばしばだった。

それで、案の定というかわずか3巻ほどで
WJからUJへ島送りになりもはやジョジョもこれまでか…と思っていたら、
エルバ島に送られたナポレオンよろしく面目躍如を遂げたのだ。

所々に感じられるスタンド戦の複雑さ、無理矢理感

先に述べたところと少々被るが、
5部の後半あたりから目立ち始めていた
スタンドバトルの過剰な複雑さや勝敗の無理矢理感は
SBRにおいてもさほど解消されていなかったように思う。

これについては星新一がSFで、手塚治虫が漫画で
あらゆるアイディアをやり尽くしてしまったように
荒木先生自身がスタンドを使った頭脳戦というジャンルを
やり尽くしてしまったことが原因にあるのではないだろうか。

となるとこの状態を打破するには、
もうスタンド漫画はやめるか、あるいはスタンドという概念を
都市伝説や怪談の方向に拡張する(岸辺露伴は動かないシリーズのように)しかないわけだが
現行最新作のジョジョリオンにおいてもその問題は解決どころか余計に深刻になっているわけで…

すでに予告されている第九部ジョジョランド(仮)でも
スタンドは出ると思うが、この問題が解決を見るかどうか
楽しみ半分不安半分というのが偽らざる心境である。

SBRはアニメ化する?

ここまでSBRの良い点と悪い点を振り返ってきたが、
果たしてSBRは今後アニメ化の機会に恵まれるだろうか?

現在六部まで順調にアニメ化を果たしてきたとはいえ
DVDボックスの売り上げは右肩下がりだし
六部に至ってはネットフリックス限定配信という微妙さだ。

また、七部はそれまでの部と比べて
人型スタンドが少なく、メインとなるキャラが少ないので
立体物などの関連グッズ展開も厳しいところがある。

加えてよく指摘されるように馬の作画は大変なので
その点も不安要因になっている(CGという手もあるにはあるが…)。

個人的にはアニメで見たいという気持ちもあるが
現実的に考えればアニメは六部までで打ち切りという可能性もなくはないだろう。

終わりに

本日はSBRについて、思うことをあれこれ述べたが
その上で改めて思うのは私はSBRという作品が好きだということだ。

あんな漫画は荒木先生にしか書けなかったと思うし、
時間はかかったけれどSBRの物語を最後まで読めたことは
自分にとって幸運だったと思う。

その上で、願わくばSBRもアニメ化、
それもネトフリ限定ではなく5部までのように
1話ずつ放映してほしいものだが、果たしてどうなるだろうか…?

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